
「コンサルタントって、普段どんなことを考えて支援を行っているんだろう?」
そう疑問に思われる方も多いのではないでしょうか?
この仕事をしていると、支援の際に意識していることや裏での準備など、表には出ないノウハウや考え方が多く蓄積されてきます。そこで、普段のお役立ち情報とは少し視点を変えて、そんな「コンサルの裏側」をお伝えしていくシリーズをスタートします。
記念すべき第1回目でお届けするのは、ご支援の初期段階で行う「社員インタビュー」の裏側です。
ご契約後、まずは経営者様へのヒアリングを通して会社の強みや課題を整理していくのですが、それと並行して私が重視しているのが、現場の社員さんへのインタビューです。
以前は社員全員に実施していた時期もありましたが、人数が多くなりすぎたり成果に繋がりづらかったりした経験から、現在は「店長」に限定して実施しています。一番の目的は、各スタッフの知識や会社への思いを聞き出し、個々の課題や長所を明確にすることです。
インタビューというと、こちらから色々と質問をして、その回答を聞いていくものだと思われるかもしれません。もちろん、それが基本なのですが、実際には「何を話すか」だけではなく、話し方や質問への答え方、さらには一見インタビューとは関係のないようなところまで見ています。そこから、その人の知識や問題意識、仕事への取り組み方、さらには会社の風土まで見えてくることがあるからです。
では、実際にどんなところを見ているのか。ここから、その「裏側」をお伝えしていきます。
【この記事の執筆者】
中西 敏弘
中西フードビジネス研究所 代表。飲食企業の多店舗展開支援や、人を活かす飲食店経営の仕組み作りを専門とする飲食店経営コンサルタント。
プロフィールの詳細はこちら>>>
手書きのヒアリングシートから見えてくる「会社の風土」
インタビューでは、長年使っているオリジナルのヒアリングシートを活用して進めます。同じフォーマットを使うことで、過去に行った他社のインタビューとも比較でき、その比較から各社の長所や課題を客観的に導き出せるからです。

このシートは事前に配布し、記入していただいてからインタビューに臨んでいただくのですが、一つだけ絶対のルールがあります。それは「必ず手書きで記入してもらうこと」です。
手書きで記入してもらうことで、字の書き方や丁寧さ、文字の大きさ、記入量などから、その人がどれくらい真剣にヒアリングシートに向き合っているのか、仕事に対してどのような姿勢で取り組んでいるのかを見ることができます。だからこそ、手書きでの記入を徹底してもらっています。

特に会社ごとの差がはっきり出るのが「文字の量」です。普段から文章を書くことに慣れていたり、できるだけ行間を埋める(白紙の部分を少なくする)などの指導ができている会社は、皆さん丁寧にたくさん記入していただけます。
反対に、書面化することに慣れていなかったり、日報等を書かせているとしても特に指導をしていない会社では、コメントが数行しか記入されていなかったり、真剣に考えたとは思えない内容も散見されます。
こういったところから、普段の会社側の指導のあり方も探ることができます。厳しいからいいのではなく、すべての仕事に丁寧さ、一生懸命さを求める風土があるのかも判断しています。
これまでの経験上、コメント量が少ない会社ほど、「社員の自主性に任せている」という言い方はできるものの、実際には、社員に任せたままで十分な指導や関わりができていないケースが多く見られます。言い換えれば、「自主性に任せている」のではなく、会社側が社員を「放ったらかし」にしている状態です。
ヒアリングシートのコメント量ひとつを見ても、普段から会社が社員にどのように関わり、どこまで仕事に対する姿勢を求めているのかが見えてくる。これも、これまで多くの会社を見てきた経験から感じていることです。
ヒアリングシート通りに聞くだけでは、相手のことは分からない!

実際のインタビューは、このヒアリングシートを活用しながら進めます。掛かる時間は基本30分、話が盛り上がった場合は60分ほどです。
インタビューを行う中で一番気をつけていることは、「できるだけ相手に話をしてもらうこと」です。
最初の頃は色々と伝えたいことがあって私自身が話す時間が多い時期もありましたが、年々「話を引き出す」ことを意識して行っています。
インタビューは基本的にヒアリングシートに沿って進めますが、書かれている内容だけを聞いて終わるわけではありません。相手の回答を聞きながら、気になったことやもう少し詳しく聞きたいことがあれば、その場で質問を加え、できるだけ話を広げていくようにしています。
相手に知識や経験があれば、そうした質問を重ねることで話をさらに広げたり、深掘りしたりすることができます。反対に、知識や経験がなければ、いくら質問をしても話が広がらず、結果としてインタビューの時間も短くなります。こうした対話を通して、その人がどれくらいの知識や経験を持っているのか、その知識や経験を推し量る判断材料にもしています。
一方、「会社の好きなところ」や「お店の問題点・改善点」について話を掘り下げても、会社への不満や愚痴、他人のせいにする話ばかりで、自分自身の問題として仕事を捉えられていない人は、10分以内で切り上げます。それ以上話を続けても、その人の考えや問題意識を深く探ることができないからです。
実際、こういった社員は、コンサルティングを続けていく中で会社を辞めていくケースが多くあります。経営者自身も「会社に不満を持っているのでは?」と薄々感じていることがありますが、第三者である私がインタビューをすることで、それまで見えなかった本音や会社に対する不満が浮き彫りになることもあります。
少し話がそれましたが、ここからインタビューの話に戻しましょう。
私がインタビューやヒアリングシートを通して、主に確認しているのは次の6点です。
- 目的・目標意識
- 数値への理解度・把握度
- 問題意識
- 指導に対しての意識
- モチベーション
- 行動力
なお、2の数値や5のモチベーション、6の行動力などはシート内に直接的な質問項目があるわけではありません。対話の中で「今勤務しているお店の前月の売上は?」といった具合に直接質問を行い、把握していきます。
私はなぜ、ヒアリングシートにない「数値」を突然聞くのか?

特に「数値への理解度・把握度」は重視しています。
便利なツールが増えたことで日常的に数字に触れる機会が減り、自店の売上や原価率、人件費率を頭で把握できている店長が減っているのが現状です。だからこそインタビューでは、知識テストとしてではなく「日常的に自店の数字を把握しているか」を直接質問して確認します。
これも会社ごとに差があり、数字をきちんと管理している会社の店長は、こうした質問にもほとんど答えることができます。逆に、それほど数字を意識させていない会社では、店長の数字の把握率も自ずと低くなります。
実際、こうした質問に対して、自店の数値を確実に把握できていない店長は、40%ぐらいでしょうか?
つまり、店長にその場で数字を聞くことで、その店長自身の数値への意識だけではなく、会社が普段から店長にどこまで数字を意識させ、管理させているのかまで見えてくるのです。
数字については、毎日見ているかどうかが、数字をコントロールできるかどうかの一番の肝です。数字を把握できていないのに、数字をコントロールできるはずがありません。店長として数字をコントロールすることは最も大きな役割ですから、この部分には時間を割いて話を伺います。
インタビューで見えてくる「店長が具体的に行動できない理由」

「お店の課題は何ですか?」という質問から、どれくらい店舗の現状を把握できているかも確認します。
店長から返ってくるのは、「人がいない」「売上が低い」「原価が高い」といった大雑把な捉え方ばかりです。
自身の課題や必要なスキルに関して伺う設問もありますが、30年近く現場を見てきても、自分自身をきちんと捉えて、自分に必要なスキルなどを具体的に把握している人など、いまだかつて一人もいません。
これは、私が支援している10店舗未満の会社、そして、そのスタッフに共通する課題です。
その課題とは、課題や問題の捉え方が「漠然」としていることです。つまり、課題を漠然と捉えているため、その解決策も具体的にならず、「頑張る」「意識する」「気合を入れる」といった曖昧な答えが多くなるのです。
なので、ここの部分の強化がご支援(コンサルティング)に入ったときの私が一番取り組むことであり、また、皆が苦手にする部分でもあります。
課題を漠然と捉えていれば、その解決のための行動も漠然としたものになります。反対に、課題を具体的に捉えることができれば、「では、何をすればいいのか」という行動も具体化できます。
この課題と行動の具体化ができるようになれば、行動が具体化することで成果が出やすくなります。これが、コンサルでの一番のポイントになるのかもしれません!
質問・相談の欄に「何も書けない店長」と「支援に入ると必ず急激に伸びる店長」の決定的な違い

ヒアリングシートの最後に「何か相談、質問を私(中西)にしてください」という設問を設けています。その目的は、各スタッフ自身に「問題意識」があるかどうかを探るためです。
人は何かに真剣に取り組んでいると、必ず問題や苦難にぶつかり、「これはどうしたらいいんだろう?」という疑問が浮かんできます。そのため、この設問を通して、日頃から問題意識を持って仕事に取り組んでいるかどうかを確かめるようにしています。
実際にこの項目へ記入する人は全体の20%くらいで、自分の仕事に関して書いてくる人はその中の30%ほどしかいません。
そんな中で、自分の仕事について具体的な相談や質問をしてくる人には、ある共通点があります。ご支援に入ると、必ずと言っていいほど急激に成長するのです。
なぜなら、質問があるということは、それだけ普段から自分の仕事について考え、問題意識を持って取り組んでいる証拠だからです。「もっと良くするにはどうすればいいのか」「この問題をどう解決すればいいのか」と考えているからこそ、聞きたいことが生まれます。
だから私は、「相談したいこと、聞きたいことがあるかどうか」も、その人が普段からどれだけ問題意識を持って仕事に取り組んでいるのかを見る重要なポイントとしています。
【裏話】お茶の出され方に現れる「気づきの視点」

番外編として、インタビュー中(あるいは開始前)に、水やお茶などを出してくれるかどうかも密かにチェックしています。
本来、お客様が来られたら水やお茶などを出すのは当たり前のことです(もちろん、インタビューの際にお茶を出してほしいと言っているわけではありません)。しかし、意外にも営業以外の場面になると、このお客様対応や気遣い・礼儀ができない飲食スタッフが多いのも事実です。
インタビューは1日で4〜5人一度に行うことが多く、同じ部屋で進めていると最初にお水やお茶を出していただいても途中で必ずなくなります。そうした周囲の変化に気づき、自然と気遣いや配慮ができるかどうかも、店舗でしっかり仕事(気遣い)ができるかを見定める重要なチェックポイントにしています。
これも会社ごとに違う傾向があり、気が利く会社と気が利かない会社に分かれます。「ある人はやるけれどある人はやらない」ということはあまりなく、誰も気づかないか全員が声をかけてくれるかのどちらかに分かれます。
私たちが生業としている飲食業において、そうした「気づき」ができるかもスタッフを判断する重要な材料の一つとしています。
現状を把握し、伴走するための第一歩

最後になりますが、インタビューを実施した後に課題ばかりに目を向け、課題に対してあーだこーだ指摘・指導することがインタビューの目的ではありません。
どんな長所や課題があるかの現状を把握することが目的であり、インタビュー後に他社と比較をした上でスタッフや会社の長所・課題を整理し、それを今後のコンサルティングや会社作りに活かしていく材料にするために行っています。
一人ひとり30分から1時間くらい話せば大まかな輪郭が見えてきます。その後、勉強会やミーティングを実施したり、店舗訪問で実際の動きを見ていったりすることで、各自のスキルや性格などを深く把握していく。その第一歩がこのインタビューなのです。
コンサルティングというと、課題を見つけて「ここを直しましょう」と指摘する仕事だと思われるかもしれません。しかし、その前に必要なのは、その会社で働く人たちが「今、どんな状態なのか」をできるだけ正確に知ることです。
何を知っていて、何を知らないのか。何に問題を感じ、何には気づいていないのか。どんな長所があり、どこに課題があるのか。
それを知らずに、その会社や人に合った支援を行うことはできません。
各スタッフの性格やスキルなどを把握し、そこまで入り込んでご支援を行うことが私のコンサルティングの大きな特徴です。
だから私にとって社員インタビューは、「指導するための時間」ではなく、その会社とそこで働く人を知るための時間であり、ここから実際のコンサルティングが始まっていくのです。
※戦略策定から現場の仕組み作り、評価制度構築までをワンストップで支援する飲食店コンサルティングの全メニューはこちら>>>>


