●1か月で「料理提供の評価」を20%改善することに成功!
 
A店は焼き鳥居酒屋。売上も最近減少傾向にあることから、その理由が接客にあるのではないかと考え、原因をさぐるためにアンケート調査を実施しました。

スタッフの笑顔、料理・ドリンクの提供時間、料理のボリューム、お客様への気配りなど、10項目を5段階評価でお客様に評価していただいたところ、すべての項目が低評価。その中でも特に、「料理提供」の評価は平均すると3.4点という低評価。この中身を詳しく分析すると、「やや遅い」と答えた方が25%近くも占め、また「料理が遅い、ドリンクが遅い」というクレームもアンケートの中にはたくさん書かれていました。
 
そこでA店のオーナーは具体的な改善策を検討することにしました。
まず、いろいろ問題点はありますが、「料理提供」だけの改善を始めることに焦点を絞りました。その理由は、確かにスタッフの笑顔(評価:3.9点)やお客様への気配り(評価:3.8点)への評価も低いのですが、これらも一緒に改善しようとすると、スタッフが色々とやることが多すぎて混乱するだろうと考えたからです。改善する項目を「ひとつに絞りこみ」その改善にスタッフの意識を集中させることで確実に改善を成功させ、その事実に自信を持たせることで次の行動に繋げやすいようにさせようという狙いがあったのです。
 
 
次に「料理提供が遅くなっている」とお客様に感じさせている理由をオーナーと店長が考え、次のような要因を抽出しました。

①スタッフ全員が「早くださなければ・・・」という意識が低い
②ミスが多い
→オーダー受けの際に「復唱」をしないため、オーダーミスが多発し、それによって余計な仕事が増えることでどんどん提供時間に遅れを生じさせている
③焼き鳥に注文が集中する
→焼き鳥に注文が集中することにより、焼き鳥の提供スピードが遅くなる
④ホールとキッチンの連携が悪い
→ホール側からの「何番テーブルの焼き鳥を急いでください」という声掛けやキッチン側からの「急ぎのテーブルはどこ?」などという声の連携が少ない
 
 
さて次は、こうやって出た問題点をひとつずつ改善する方法を検討することにしました。
 
まず、①「スタッフの意識が低い」という点に関しては、アンケート結果をスタッフに見せて、自分たちは頑張っているつもりでもお客様は「料理提供が遅い」と感じている事実をしっかりと受け止めよう、という話をオーナー自らがスタッフ達に話すことにしました。
 
そして、②の「ミスが多い」ということに関しては、「復唱」を徹底することにしました。これまで復唱はお店で誰一人実践していなかったため、再度、復唱の方法をお客様が注文されたことばをその場でオウム返しするという復唱方法に統一しこれを全員が徹底することにしました。また、その時のポイントとして注文された方の顔をみてそして目をみて復唱することも徹底することにしました。そして、確実に実行するために、毎日の朝礼の際に店長を中心に注文伺いのロールプレイングをすることにもしました。オーナーは店長に対して、特にアルバイトにはできる限り褒めて自信をつけて営業に入るようにしなさいという指示もしました。
 
③の「焼き鳥に注文が集中する」ということに対しては、スピードメニューをわかりやすく店内にPOPで掲示したり、差し込みメニューで「スピードメニュー」が目につくようにし、注文伺いの際にスタッフ側から、できるだけ声をかけることにしようということにしました。
 
そして最後④の「ホールとキッチンの連携が悪い」ということに関しては、ホールリーダーを決め(社員)、リーダーができるだけ各テーブルの料理の提供度合いを常に確認し、遅れているテーブルに関してはホールリーダーがキッチンの人に声をかけるようにしようということにしましまた。また、ホールの他のスタッフもできるだけテーブルの状況には今まで以上に注意し、もしテーブルに料理があまり提供されてないと感じたらすぐにホールリーダーに報告するというルールも決めました。

この4つの改善項目をA店の店長は、早速オーナー次の日から実行に移しました。
そして、この改善を進めるとともに、この改善が効果的であったのかどうかを調べるために、再度、3週間後にお客様アンケートを実施したのです。

すると、なんと料理提供の評価は3.4点から3.9点に大幅にUP。特に前回「やや遅い」という評価が25%近くあったものが、3%まで減らすことに成功しました。そして、もうひとつ驚いたことは、“料理提供だけの改善に焦点を絞った”にも関わらず、「笑顔」と「お客様への気配り」の評価もそれぞれ3.9点から4.3点、3.8点から4.2点へと大幅に評価を上げることに成功したのです。

これは復唱を徹底したことでオーダーミスが大幅に減ったことにより、スタッフにも余裕が生まれたことがこの好結果につながったのではないかとオーナーは話しておられました。この結果にオーナーと店長は自信を深め、特に店長が自信をもったようで翌月からはオーナーからの指示がなくとも自ら先頭に立って改善を進めているとオーナーはニコニコしながら話されていました。