飲食店の離職率はなぜ高いのか?最新データと一般的な理由

 
令和6年(2024年)の雇用動向調査によると、「宿泊業・飲食サービス業」の離職率は29.9%。これは全産業の中で最も高い数字です。

一般的に、飲食店の離職率が高い理由は、

  • 労働時間が長く、休日が少ない
  • 他業種に比べて給与水準が低い
  • 肉体的な労働負荷が大きい

といった「労働環境の悪さ」にあるとされています。
しかし、多くの飲食店を支援してきた経験から言えば、本当の原因はそこではありません。

もし労働条件だけが理由なら、休みを増やし、給与を上げれば離職は止まるはずです。ところが、条件を改善しても人が辞め続ける店は後を絶ちません。なぜなら、離職の根本原因は「条件」ではなく、経営者とスタッフの間の「関係性」や「仕組み」に潜んでいるからです。

経営者がまず直視すべき事実は、離職率という「数字」を上げ下げすることではなく、「なぜ、今のメンバーが辞めていくのか」という中身(理由)です。

スタッフが「この店で働き続けたい」と思えない本当の原因は何なのか?離職率が高い店に共通する「5つの問題点」から、その本質を探っていきましょう。

 

 

「離職率」低下への取り組みの悩み、その原因はどこにあるのか?

 
先述しましたが、多くの飲食店経営者が「離職率を低下させる」ことに頭を悩ませていることではないかと思います。しかし、その原因を曖昧にしたまま、世間のトレンドに合わせて形だけ取り繕っても、結果は変わりません。

私はこれまで、多くの飲食店を支援する中で、離職率の高い企業にはある「5つの共通点」があることに気づきました。まずは、その共通点からスタッフが辞めていく本当の原因を探っていきましょう。

 

飲食店の離職率が高くなる理由|共通する5つの問題点

長年のコンサルティング経験から見えてきた、離職率の高い飲食企業が抱える根本的な問題は、以下の5つに集約されます。結果として、飲食店の離職率は高止まりし、現場の疲弊が進みます。

 
 

1.【関係性】スタッフを「売上を作るための駒」と見なしている

店を開けて売上を作ること。それだけをスタッフに求めていませんか?
スタッフを「営業というマシーン」としか見ていない経営者は、彼らの「やる気」や「やりがい」を軽視しがちです。
自分の指示通りに動いてくれればいい。そうした姿勢は、スタッフの提案をすぐに却下したり、頑張りを正当に評価しない環境を生み出します。
結果として、スタッフは「自分の存在意義がない」と感じ、会社への帰属意識を失ってしまうのです。
 

 

2.【報酬観】「給与さえ高くすれば人は辞めない」という思い込み

「給与を高く設定すれば採用できるだろう」という安易な考えは危険です。
確かに、採用時の給与は他社との差別化になりますが、スタッフはそれを「スタートライン」だと考えています。
自分の頑張りが給与に反映されない、昇給の兆しが見えないとなれば、不満はあっという間に溜まります。
スタッフは「マシーン」ではありません。彼らの努力を正当に評価しないままでは、信頼関係は築けません。

 
 

3.【不信感】経営情報を開示せず、スタッフを「蚊帳の外」に置いている

「儲かっている事実をスタッフに知られたくない」「会社の未来を話しても仕方がない」
そんな閉鎖的な考え方が、不信感を募らせる原因になります。
売上だけでなく、会社のビジョンや今後の方向性を共有しないと、スタッフは「自分たちは何のために働いているのだろう?」と迷い始めます。
経営者の情報発信がなければ、スタッフは「自分は蚊帳の外に置かれている」と感じ、会社への関心を失ってしまいます。

 
 

4.【教育環境】「ダメ出し」ばかりで成長の機会を与えていない

離職率の高い企業の経営者は、スタッフに本気で成長してほしいと考えていないことが多いです。
成長すれば給与を上げなければならない、とすら考える人もいます。
結果として、「できないこと」ばかりにダメ出しをしたり、成長を促すための仕組みを用意しません。
「自分は役に立っていない」「このままでは成長できない」と感じたスタッフは、やがてモチベーションを失い、職場を去っていくのです。

 
 

5.【評価基準】経営者の「勘」で決まる不透明な評価制度

「勤務時間」で給与を決めていませんか?
スタッフのやる気を引き出し、成長を促すためには、明確な評価基準が不可欠です。
しかし、多くの企業では、経営者の勘や感覚で給与が決定されています。
これではスタッフは「何をどう頑張ればいいのか分からない」「努力しても意味がない」と感じてしまいます。

 
 
離職率の高い企業には、こうした共通点が見られます。
お気づきかもしれませんが、その根底にあるのはすべて、経営者自身の「あり方」です。

特に社員30人未満の規模であれば、スタッフは経営者であるあなたのことしか見ていません。あなたの言動一つひとつが、スタッフのモチベーションを大きく左右します。
SNSの投稿内容でさえ、不満につながる時代です。「自分の振る舞いがどう映っているか」を常に意識することが、離職率を低下させる第一歩です。

 

 

  

離職率の解釈|「会社のセイ」にして辞めていくスタッフもいる

もちろん、離職の原因がすべて会社側にあるわけではありません。中には、会社が成長し、組織が変化していく中で、会社の「セイ」にして辞めていくスタッフがいることも事実です。

私のコンサルティング経験上、こうしたスタッフには以下のような特徴が見られます。
 

「やるべきこと」が増えたと感じる

会社が成長する過程で、これまで曖昧だった業務が明確になると、「単純にやることが増えた」と不満を持つケース。例えば、これまで「適当」に済ませていた開店準備をチェックリスト化しただけで、「厳しくなった」「面倒だ」と不満を漏らして去っていくのがこのパターンです。

 

②基準や規則が明確になるのを嫌がる

小規模なうちは「グレー」で許されていたことが、「白黒」はっきりさせられることに居心地の悪さを感じるケース。「これくらいはいいだろう」という甘えが通用しなくなり、会社の規律が整うことに居心地の悪さを感じて、古いスタッフが反発して辞めることがよくあります。

 

③自分の能力の限界から逃げる

成長のために新たな課題に取り組む中で、自分の能力不足に直面し、それを乗り越えようとせず辞めていくケース。評価制度の導入などで「自分の今の実力」を突きつけられた際、それを直視できず「この会社は自分を分かっていない」と責任転嫁して逃げ出すケースです。

 

こうしたスタッフは、往々にして「社長の言っていることが分からない」「こんなことやって何の意味があるの?」など、退職理由を会社の”セイ”にしがちです。

こうした人たちを守ることは、かえって組織に悪影響を与えかねません。しかし、会社側に問題があって優秀なスタッフを失うのは、非常にもったいないことです。
会社にとって本当に必要な人が残り、活躍できる環境をどう作るかが重要です。

 

  

「人を活かす飲食店経営」で離職率を下げる!|飲食店コンサル、中西の3つの提言

離職率をゼロにする必要はありません会社の価値観に合わない人が去っていくのは、健全なことだからです。大切なのは、「会社にとって必要な人が確実に残ってくれる環境」を作ることです。これは“小手先の福利厚生”ではなく、離職率を継続的に下げるための土台づくりです。

そのために、私は以下の3つの対策を提言します。

 

 

1.採用を「会社の価値観を伝える場」に変える|ミスマッチによる早期離職を防ぐ

面接は、求職者を見極めるだけでなく、会社の「あり方」を伝える絶好の機会です。
会社のビジョン、求める人物像、仕事に対する価値観を徹底的に説明し、それに共感してくれる人を採用する。このミスマッチをなくすことが、長期的な定着につながります。
大手と同じ採用広告を作っても、小さな会社は勝てません。自社が求めるターゲットを明確にし、その人に響くようなメッセージを発信しましょう。
  
 

2.スタッフが成長を実感できる環境を整える|「キャリアプラン」と「評価面談」の仕組み化

「キャリアプラン」や「各役職の役割・仕事内容」を明確にすることで、スタッフは未来をイメージし、努力の必要性を感じることができます。
「自分で考えてやってほしい」というのは、スタッフのモチベーションを下げるだけでなく、成長の機会を奪うことにもつながります。
評価面談や定期的なフィードバックを通じて、「できていること」を正しく伝え、成長を実感させてあげましょう。
また、「気軽に相談できるメンター制度」を導入するなど、仕事の相談相手がいないという状況を解消する工夫も有効です。
 

 
 

3.経営者自身が率先して情報共有とコミュニケーションを図る|「経営方針発表」と「直接対話」の実行

年に一度は経営方針発表の機会を設け、会社のビジョンをスタッフに直接伝えましょう。スタッフの行動がすぐに変わるわけではないかもしれませんが、会社の方向性を共有することで、一体感が生まれます。
また、規模が小さいうちは、社長とスタッフが直接話す機会を積極的に作りましょう。ランチ会などのカジュアルな場でも構いません。社長に自分のことを見てもらえている、と感じるだけで、スタッフのモチベーションは大きく向上します。
 
  

これらの対策は、「エンゲージメント(会社と社員のつながり)」を高めることにもつながります。
※「エンゲージメント」に関しては、こちらのページで詳しく解説しています>>>

私が掲げる「人を活かす飲食店経営」とは、まさにエンゲージメントを高め、スタッフ一人ひとりが会社の一員として誇りを持って働ける環境を作ることなのです。
※「人を活かす飲食店経営」の実態やメリット等は、こちらのページでお伝えしていますので、こちらをぜひともご覧ください。

 

 

 

経営者の「あり方」が、すべての土台となる

「スタッフが辞めない」「スタッフが育つ」会社を作るためには、まず経営者自身の姿勢が問われます。
特に規模が小さい会社では、スタッフは経営者であるあなたの動向を本当によく見ています。

あなたが経営に、日々の業務に、真摯に向き合っている姿をスタッフに見せること。
それが、「いいスタッフ」を引き寄せ、彼らが自然と仕事に熱心に取り組むようになる、一番の近道ではないでしょうか。“人が育ち、人が残る”状態を作れれば、自然と離職率は下がり、採用コストも落ち着きます。

これを読んでいる社長さん!
あなたは、社員やアルバイト、パートスタッフが心から「この社長についていきたい」と思えるような姿勢と行動を、彼ら彼女らに見せられていますか?
 

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