(5)「こんなときに何ができるのか?」の視点と行動を共有する!

前回の投稿、「『当たり前行動』という視点を共有し、やるべきことを明確にする」にて、「お客様をみて」と言っても、今の世代には「何をしていいか分からない」ため、お客様をおもてなしする視点を「当たり前行動」として共有することで、アルバイト・パートの行動を促そうということをお伝えしました。
 
この「当たり前行動」が店内に浸透すると、次のステップは、「気遣い・気配りの徹底」ということで、さらにお客様の見るべき視点を増やしていくことになります。
 
どうやって「視点」を増やすかと言えば、お客様に対して店側が気配りの行動をした際に、お客様が発する言葉を5~6個、抽出します。
具体的には、
・「気が利くね」
・「よく見てるね」
・「よく聞いてるね」
・「よく覚えてるね」
・「よく気づいたね
・「よく分かってるね」
などです。
 
 
そして、「気が利くね」と言われる行動のための視点を皆でたくさん出し合っていくのです。
 
「気が利くね」であれば、
 
・荷物を入れる場所がないときに、荷物入れを持っていく
・寒そうにしている人に、ブランケットをもっていく。
・コートをコート掛けにかける(あるいは、コートを預かる)
・ドリンクが必要でない人、薬を飲もうとしている人に水をもっていく
・大人数の場合、皿を2つにわける
 
などなど。このようにシーン(視点)と行動をまとめていくのです。
これをまず、OFF-JTのミーティングで皆で共有します。
 
 
そして、ここから現場での実践です!
現場ではこの「気遣いの行動」の「教え方」が大切になってきます。

悪い例としては、
例えば、よくあるのが、お店でエアコンの下の席の場合、風が直接あたってどうしても寒い場合がありますね。
 
そこで、ある店では、この席に”女性”が座ったら、必ず、ブランケットを持っていくというルールを作っていました。そのため、その場面になった場合、スタッフは必ずブランケットを”女性”のお客様にはブランケットを持参するようになりました。
 
ただし、この店では問題・課題がありました。
 
どんな問題・課題かと言えば、、他の席でも「寒そうな女性」がいたとしても、あるいは、「寒そうにしている男性」がいたとしても、スタッフの誰一人、お客様に声を掛けたり、ブランケットを持って行くという行動を行わないのです。
 
恐らくこの店のアルバイト・パートには、「あの席に、女性が座ったらブランケットをもっていく」としか頭にインプットされておらず、他の席で同じような状況が起こっても反応できないのです。
 
 
私は、「これがマニュアルサービスだよ」と店のスタッフに伝えのですが、最初はピンとこないようでした。
 
マニュアルサービスというのは、「決めたことを決めた通りやること」。マニュアルに書かれていることを手順通り行うことです。
店の人たちは、「気遣い」の行動を行っているから、これは「マニュアルサービスでなくて、気遣いです!」と主張していましたが、実際には、その席でしか行動できないのですから、まさしくこれこそがマニュアルサービスなのです。
 
 
ここに何が足りないかと言えば、「状況判断」させることなのです。
 
「お客様が寒そうにしていたら・・・」というシーン(視点)を共有しておけば、きっと他の席でも応用して行動できるはずです。
 
だからこそ、単に「ブランケットを持っていく」ということだけを共有するのではなく、「お客様が寒そうにしていたら」というシーンを共有するのです。
また、このシーンでは、「ブランケットをもっていく」というのだけが、正解ではありませんよね?
 
例えば、「エアコンの温度をあげましょうか?」と提案したり、「もしよろければ、温かいスープ(もしくはお茶)をお持ちしましょうか?」などと声掛けしてもいいですよね?
 
 
このように、OFF-JTで、様々なシーンをもとに、「お客様に何ができるのか」を話し合ったり、考えたりする時間が非常に重要になってくるのです。そのきっかりつくりのために、「気遣い・気配りの視点」をつくり、どんなときに何ができるのかをぜひ共有してほしいと思います。
 
多くの飲食店が、「お客様がして欲しいことだけを行う」というのが当たり前になってきた今、「お客様への気遣いの視点」はもはや知らない人がほとんどです。だからこそ、「こんなときに何ができるのか?」の視点と行動を共有していかないとおもてなし力はアップしないのです。