
安さだけの告知が集客を遠ざける理由
SNSの投稿を眺めていると、
「半額セールやってます!」
「今週の日曜は15:00から営業!ハッピーアワーも実施、ご来店の方には1品サービス!」
といった投稿をたまに見かけます。
もちろん情報としては悪くありませんが、正直少し残念に感じることがあります。というのも、「値引きします」「営業時間を延ばします」「サービスします」という単なる案内だけで、工夫が足りないからです。
裏を返せば、「値引き」「時間延長」「サービス」以外に打ち手がなく、それゆえに集客に苦戦しているのではないでしょうか?
お客様が入っている店は「価値を高める工夫」をしている
きっとこんなご時世でも、お客様がそこそこ入っている飲食店はあります。
そんなお店は、
・定期的に新商品を投入している
・日々、商品・接客の改善をしている
・商品にこだわりがある
・接客もお客様のシーンを考えて、さりげない接客をしている
・お客様が“驚く”商品がある
・他では楽しめない商品がある(ありきたりの商品ではない)
・店のコンセプトにあった商品がある
・どんなシーンで使えばいい店なのか、すぐにイメージがつく
などなど。
お客様目線で見ても、コンサルタント視点で見ても、こうしたこと(これ以外にも多くありますが…)を確実に実践しているのが分かります。
そして、これらはすべて「自店の価値をいかに高めるか」という発想から生まれた行動なのです。
値引きよりも「価値」を伝える投稿を
僕は「値引き」自体を悪いことだとは思いません。時間帯限定の割引も戦術次第では有効です。しかし、自店が「価格」ではなく「価値」を売る店であるなら、値引きに頼るのは戦略的に誤りだと断言できます。
だからこそ、「価値」を売る店であれば、その「価値」を伝える投稿にもっと力を入れるべきです。
たとえば――
「この料理はこんな仕込みをしています」
→ 例えば、カレーひとつ取っても「玉ねぎを飴色になるまで3時間炒めています」と伝えるだけで、お客様の受け取り方は変わります。同じ一皿でも、「手間ひまを惜しまないからこそこの味が出ているんだ」と感じてもらえるのです。
「この素材はこれだけ貴重なんです」
→ 地元でしか採れない野菜や、特定の漁師さんからしか仕入れられない魚など。その背景を語れば「食材そのものが特別」という付加価値になります。単なる料理が、“今この瞬間しか食べられない特別な体験”へと変わるのです。
「この食べ方でより美味しくなります」
→ 例えば「まずは塩だけで味わってください」「最後にレモンを絞ると香りが立ちます」と一言添えるだけで、お客様の食体験は変わります。食べ方の“正解”を提示することは、単なる料理提供から“体験をガイドする店”に昇格させるのです。
「実はこれと組み合わせると美味しさが倍増します」
→ 「この料理は実は日本酒の△△と合わせると驚くほど相性がいいんです」と伝えれば、単品の商品が“提案された楽しみ方”に変わります。お客様は「この店は食べ方まで考えてくれる」と感じ、強い印象を残すことができます。
こうしたエピソードを発信するだけで、投稿は単なる宣伝ではなく「価値を感じさせるストーリー」になります。結果として「安いから行く」のではなく「ここでしか味わえないから行く」という来店動機が生まれるのです。
集客につながる「希少性」のアピール
さらに、早い時間帯の集客を狙うなら、値引きではなく「希少性」でお客様を動かす方法があります。
「なかなか入らない●●を仕入れたので、特別に××に調理しました。ただし数量限定、先着5名様まで!」
「以前から探していたワインを仕入れました!今回はグラスで楽しめますが、2本しかないので早い者勝ちです!」
「今週の日曜は15時オープンにしました!せっかくなので普段は非公開の〇〇仕込みを特別公開します。ちなみに同業者はご遠慮ください(笑)」
このように「早く来た人が得をする仕掛け」をつくれば、自然と集客につながります。人は「今しか味わえない」「数量が限られている」という状況に強く反応します。だからこそ、希少性を打ち出すことは単なる集客手法にとどまらず、来店の動機そのものをつくり出すのです。
さらに、希少性を伝えることは「この店は常に特別な体験を提供してくれる」というイメージを育てます。お客様は「ここに来れば驚きがある」と期待するようになり、結果としてリピーターやファンを増やすことにもつながります。
つまり、希少性のアピールは短期的な集客だけでなく、長期的な信頼とブランド価値を築くための大切な取り組みなのです。
「今」だけでなく「未来」を見据えて
大切なのは「何か行動する」ことだけでなく、「自店の価値をどう伝えるか」を掘り下げて考えることです。
もちろん、こうした取り組みは一度で結果が出るものではありません。
しかし、店を「永続的に」経営していくには、日頃から「価値を高める」努力を積み重ねるしかありません。
今もお客様がしっかり入っている店は、間違いなく「価値向上」に継続して取り組んできたお店です。
短期的な「今」の施策も必要ですが、そればかりでは未来をつくることはできません。
「価値」を高めること、そしてその「価値」をどう伝えるか。
これを常に意識することこそが、飲食店を長く続けるための唯一の道ではないでしょうか?
