
ラーメン店4店舗経営者からの相談
1年ほど前のことです。
ラーメン店を4店舗経営している社長からご相談をいただきました。最初はZoomで色々とお話をしましたが、「実際に現場を見た方がより具体的にアドバイスできる」と思い、3日後に店舗へ伺うことになりました。
FLコストに偏った視点
4店舗を社長と一緒に臨店しながら車中で話していると、どうも気になる発言が多くありました。
- 「そこまでは人は掛けられない」
- 「原価率が高くて、どうすれば下がりますか?」
──と、とにかく「FLコスト」の話ばかりなのです。
実際にある店舗のバックヤードを見学すると、そこにはこんな張り紙が。
「人時売上高 4,500円をなんとか達成しよう!」
本来なら「売上をこう伸ばしていこう」「お客様にもっと喜んでいただこう」といった内容が並ぶはずの掲示板に、コスト指標が“店舗の目標”として掲げられていたのです。
僕は「これが会社が伸び悩む一番の理由だ」と直感しました。そこで社長に尋ねました。
「なぜ、FLや経費ばかりを気にされるのですか?」
すると、返ってきた答えは──
「会計士さんに、利益を出すにはFLを圧縮するしかないと言われたからです」
確かに利益は経営にとって最重要ですが、売上がなければ利益は出ません。
まずは“売上をつくる”動きから
売上がある程度あるのに利益が出ない場合、そこではじめてFLコストの管理が意味を持ちます。もちろん普段からコストをコントロールできていることは大前提ですが、それ以上に大切なのは 「どうやって売上を上げるか」 という視点です。
この社長には次のようにアドバイスしました。
- 客単価よりも 客数をどう伸ばすか に注力すること
- 主力商品を絞り込み、どう売るか・どう質を高めるかに集中すること
- 人を減らして経費を抑えるのではなく、販促を仕掛けて店舗の「再認知」をはかること
5時間ほど議論した後、改めてメールで内容をまとめ、もし継続支援が必要なら顧問契約のご提案をしました。3日後、社長から「コンサルティングをお願いしたい」とご連絡をいただき、Zoomで進め方の打ち合わせをすることになりました。
経費削減だけでは未来は変わらない
売上が下がり始めると、どうしても「経費を使わないように」と考えてしまいがちです。
- 「これは無駄だ」
- 「あれもやめよう」
と、マイナスの言葉が増え、人員削減や集客の停止へとつながります。ですが、それは逆に顧客満足度を下げ、さらに売上を悪化させる悪循環を生みます。
大事なのは、 経費削減よりも“お客様を喜ばせる動き”を増やすこと。
資金が苦しくてもできることは、実はたくさんあります。
- 手間をかけた仕込みをする
- 接客を丁寧に行う
- 定期的に新商品を出す
- 情報発信を増やし、価値を伝える
こうした“行動量”こそが、客数増加につながり、売上を回復させる原動力になります。
忙しい時よりも時間がある今こそ、お客様に向けた動きを強化すべきなのです。
ただ待っているだけでお客様が増えることは、絶対にありませんから。
