
飲食店の事業拡大の選択肢は主に3つ
飲食店が事業規模を拡大するための方法は、主に以下の3つが考えられます。
1、直営店による多店舗化
2、フランチャイズ(FC)ビジネスによる多店舗化
3,のれん分けによる多店舗化
それぞれにメリット・デメリットがありますが、ここでは直営店展開に焦点を当て、その手法の違いを比較してみましょう。
2つの多店舗化手法
直営店展開と一口に言っても、その経営手法には主に2つのタイプがあります。
① 規模拡大を最優先する多店舗化
規模の拡大を一番の目的に据え、業務を徹底的に標準化・単純化することで、個々の店舗の属人性をなくし、とにかく店舗数を増やす方法です。スピード感を持って急成長を目指すことが多く、大手チェーン店の多くはこの手法で店舗を増やしています。また、この手法の中でも、同一業態での展開と、様々な業種・業態に広げる多業態での展開があります。
② 地域に根ざした多店舗化
規模拡大よりも、お客様やスタッフを大切にしながら、一店舗一店舗を丁寧に育てていく方法です。スタッフの成長が多店舗展開の前提となるため、①の手法に比べるとスピード感は劣ります。しかし、地域で長く愛される人気店・繁盛店になることが多く、スタッフが生き生きと働いているのが大きな特徴です。
どちらの手法が正しいというわけではなく、どちらも正解です。重要なのは、経営者自身が「どんな経営をしたいか?」「どんな会社を作りたいのか?」という強い”思い”を持っているかどうかです。
「とりあえず儲かればいい」「売上を上げて金さえあればいい」といった安易な考えで事業を始めた経営者は、たとえ一時的に成功したとしても、最終的にうまくいかなくなっているケースを長年のコンサルタント経験の中で数多く見てきました。
成功する経営者は、手段よりも経営の目的、つまり「自分がどんな会社を作りたいか」というビジョンが明確で、その思いが強い人であると強く感じています。
飲食コンサル、中西の原点:なぜ「人を活かす飲食店経営」を推奨するのか?
多店舗化の手法が多様にある中で、私が特に推奨したいのは、先ほどご紹介した②の「地域に根ざした多店舗化」に近い、「人を活かす飲食店経営」での多店舗展開です。
当社は「人を活かす飲食店経営」の実現を支援していますが、そもそもなぜ私がこの経営手法を皆さんに強くお勧めするのか。その原点となった、20年近く前の経験についてお話しします。
当時、あるクライアントは「流行りの業態」で出店し、世間の波に乗って大繁盛店になりました。しかし、1年ほど経つと状況は一変。季節性の強い業態だったため、繁忙期には過去最高の売上を記録する一方で、閑散期には売上が半減することが度々起こるようになったのです。
売上の低迷とともに、「人」の問題も深刻化しました。繁忙期には多くのスタッフが必要ですが、閑散期になるとシフトに入れず、結果的に多くのアルバイトスタッフが辞めていきました。このシフト調整を担う店長たちは、「辞めてもらう」ことに繋がるマネジメントに悩み、心身をすり減らしていました。その結果、社員の離職も後を絶たなかったのです。
この会社の社長の経営のベースには「儲かるものをやりたい」「流行っているうちに稼ぎたい」という考えがありました。社員をどう成長させるか、会社の未来をどうするかといった考えはほとんどなく、残念ながらスタッフを「動かす駒」としか見ていないように感じられました。
この経験で決めたこと!
結果的に、この会社は数年後に飲食業界から撤退しました。
この苦い経験から、私は次のような決意をしました。
・「永続する会社作り」に繋がる支援をすること。
・「人」はモノではなく大切な宝物。その人が輝き、安心して未来を託せる会社作りの支援をすること。
・この考えに共感してくれる経営者だけにコンサルティングを提供すること。
この決意が、私が「人を活かす経営」という考え方に辿り着き、それを多くの飲食企業に広めたいと願うきっかけとなったのです。

「人を活かす飲食店経営」とは?
私が考える「人を活かす飲食店経営」とは、「人を成長させる」ことで会社の成長に繋げる経営です。この経営が実現できている会社は、スタッフが生き生きと働き、周囲からも一目置かれる存在になります。
具体的には、以下のような状態が生まれます。
・お客様満足度の向上: 一人ひとりの個性を活かした接客や、お客様を想う主体的な行動が増え、お客様の満足度が必然的に高まります。
・「人」が育つ環境: 「人」の成長を人任せにせず、育つための環境や仕組みが整っているため、スタッフのやる気次第でいくらでも成長できます。
・優秀な人材の確保: 「ここで働きたい」という人が絶えず、成長意欲の高いスタッフが集まってきます。
・共通の価値観: 会社の理念という共通の価値観のもと、全スタッフが理念の実現のために日々行動しています。
このように、「人」に焦点を当て、成長する環境を整備することで、「人」(お客様)を喜ばせ、「人」が「人」(お客様やスタッフ)を呼びます。その結果として高い売上を実現し、その積み重ねが会社の永続的な成長に繋がっていくのです。
「人を活かす飲食店経営」を目指すメリット
「人を活かす飲食店経営」は、短期的な利益だけでなく、長期的な視点で多くのメリットをもたらします。
1,スタッフのパフォーマンス向上と定着率アップ
スタッフが自分の強みを発揮できる環境が整うことで、仕事へのモチベーションが高まり、生産性やサービス品質が向上します。また、「大切にされている」と感じることで会社への愛着が生まれ、離職率の低下に繋がります。
2,顧客満足度の向上とリピーター獲得
モチベーションの高いスタッフは、マニュアルを超えた温かみのあるサービスを提供します。これにより顧客満足度が高まり、「また来たい」という気持ちを引き出し、リピーターや口コミによる新規顧客獲得に繋がります。
3,経営の安定と成長
スタッフが自律的に考え行動するようになるため、経営者は現場の業務から解放され、より戦略的な仕事に集中できます。スタッフからの建設的な意見も生まれやすくなり、事業全体の成長に貢献します。
4,採用活動の優位性
「人を大切にする会社」という評判は、働く人がイキイキとしている最高の採用広告です。良い人材が集まりやすくなり、深刻な人材不足の中、他社との差別化を図ることができます。
これらのメリットは、単に「スタッフが幸せになる」だけではありません。最終的に会社の収益アップという具体的な成果に結びつきます。
「人を活かす飲食店経営」に向いている人・向いていない人
「人を活かす飲食店経営」は、すべての経営者に向いているわけではありません。もしあなたが以下の項目に当てはまるなら、この経営手法を目指すのは難しいかもしれません。
●向いていない人
1,従業員を「動かす駒」だと考えている人
従業員を単なる労働力としてしか見ず、自分の指示通りに動かすことしか考えていない人です。
2,権限委譲に強い抵抗がある人
すべて自分でコントロールしないと気が済まず、従業員に仕事を任せるのが不安な人です。
3,即効性のある結果を求める人
信頼関係の構築や組織文化の変革には時間がかかります。すぐに結果を求めてしまうと、焦りから管理中心の経営に戻りがちです。
●向いている人
逆に、このような経営者の方は、この経営手法ととても相性が良いと言えます。
1,従業員の成長を心から願う人
「人を育てる」ことを会社の財産だと捉え、スタッフ一人ひとりの可能性を信じ、その成長を心から喜べる人。
2,従業員に任せる勇気と、失敗を許容する度量がある人
完璧を求めず、従業員の小さな失敗を成長の機会だと捉え、任せる覚悟がある人。
3,継続的な努力ができる人
地道なコミュニケーションを通じて信頼関係を築く努力を続けられる人。
4,学びや変化に対して前向きな人
新しい知識やスキルを積極的に学び、これまでのやり方を変えることに抵抗がない人。
5,自分のビジョンを明確に持っている人
「どんなお店にしたいか」というビジョンがはっきりしており、それを従業員に伝えられる人。
6,従業員とのコミュニケーションを大切にしている人
忙しい中でも、従業員一人ひとりに声をかけたり、話を聞く時間を作ったりしている人。
今だけの成功ではなく、「未来」を見据えた経営を!
私は、経営の本質とは「事業を永続的に発展させること」であると考えています。
一度始めた事業を存続・発展させ、スタッフが安心して働ける環境を提供し続けることは、経営者の責務です。私の20年前の経験が教えてくれたのは、「今」だけの売上を求めていては、会社を発展させることも、スタッフを守ることもできないということです。
だからこそ、私はご支援先の経営者さんに「今」も大切にしつつ、常に「未来」を見据えた戦略と行動が重要だとお伝えしています。
今回ご紹介した「人を活かす飲食店経営」は、短期的な利益だけでなく、「人を育てる」という長期的な資産を築き、事業を永続的に発展させるための戦略なのです。
あなたの会社は、5年後も輝き続けられますか?
「今」だけを見た経営で、偶然の繁盛を手に入れることはできます。
しかし、それは一過性の波に乗っているだけかもしれません。
波が引いたとき、あなたの会社に残るものは何でしょうか?
私は20年以上、飲食店経営を見てきて、はっきりと言えることがあります。
“人”が輝く会社は、必ず長く繁栄するということです。
売上や店舗数は、市場や景気で変動します。
けれど、会社を支え続けてくれるのは「人」です。
その「人」を大切にし、成長させ、未来を一緒に描ける会社は、強く・しなやかに成長を続けられます。
もし、あなたがこれから多店舗化や多店舗展開を考えているなら、
数字や店舗数だけを追いかける前に、ぜひこの「人を活かす飲食店経営」を土台にしてください。
・スタッフが誇りを持って働く
・お客様が喜んで通い続ける
・そして、その輪が自然に広がっていく
そんなお店を、そんな会社を、あなたと一緒につくっていきたいのです。
“人”を中心に据えた経営こそが、これからの時代の最強の成長戦略です。
未来のために、そして、あなたの会社で働く全ての人のために──。
さあ、今日から「人を活かす飲食店経営」を始めてみませんか?
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