
「研修で、こんなにアルバイトが変わるとは思わなかった……!!」
もう随分前のことになりますが、あるご支援先の社長から、最高に嬉しそうな顔でこう言われたことがあります。
その時、私が行ったのは、一般的な接客研修とは”真逆のやり方”でした。
「使えるスタッフ」はマニュアルからは生まれない
普通、接客研修といえば、お辞儀の角度、笑顔の作り方、オーダーの取り方を一挙手一投足、細かく教え込むのが定番です。もちろん、新人さんにはそれも必要でしょう。
でも、私の主眼はそこにはありません。
目指すのは、現場で本当に「使える」スタッフを育てることです。
サービスの本質は、お客様が求めていることを「さりげなく」察して動くこと。誰かの指示を待ってから動くようでは、お客様の満足には間に合いません。その場その場の状況を見て、自分で判断し、動く。
つまり「考えられるスタッフ」でなければ、本当にお客様を感動させることはできないのです。
だからこそ、私の研修では、あえて「教えない」という手法を取ります。
「自分で考える」というクセを体に染み込ませる
「教えない」と言っても、放ったらかしにするわけではありません。ポイントは、スタッフに徹底的に「考えさせる」ことです。
例えば、お出迎えのロールプレイング。
普通なら「いらっしゃいませは、このタイミングで、こう言ってください」から始まって、お客様との応対の手順を教えますが、私はこう伝えます。
「この店に入ってきたお客様が、『おっ、ここ、すごくいい店だな!』と感じるお出迎えって、どんな ことだろう? チームで話し合って、自分たちでやってみて」
これだけです!
そこから20分間、スタッフ同士でああだこうだと議論し、何度も何度もロールプレイを繰り返してもらいます。
「もっと笑顔の方がいいかな?」
「声のトーンを上げた方が歓迎してる感じがするよ!」
自分たちで意見を出し合い、試行錯誤しながら「正解」を見つけ出していく。このプロセスこそが、営業中に「お客様を観察し、自分で考えて動く」という習慣づけになるのです。
「作業」が「おもてなし」に変わる瞬間
さらに大切にしているのが、動作や言葉の「目的」を理解してもらうこと。ただ「いらっしゃいませ」と言うのと、「お客様を歓迎し、安心してもらうためにこの言葉を掛ける」と理解して発するのでは、伝わり方が全く違います。
「何のために、その言葉を言うのか?」
「その動作は、お客様にどんな印象を与えるのか?」
こうした意味を自分たちで考えるようになると、スタッフの動きから「やらされ感」が消え、一つひとつの行動に意志が宿るようになります。
わずか3時間ほどの研修。
それでも、終わった後の視察では、アルバイトたちが自ら仕事を見つけ、自分なりの言葉でお客様に寄り添おうとする姿に変わっています。
「教える」のをやめて、「考えさせる」だけで、人はここまで変貌する。 マニュアルを超えた先の、本当に強いチーム作りは、そこから始まるのです。


