
みんな“マニュアル”が嫌いなはずなのに…
僕の研修では、普段どれだけ「指示命令」に偏った教え方をしているかに気づいてもらうため、接客のロールプレイングを行います。
4人ほどのグループをつくり、1人がリーダー役、残り3人が教わる側。リーダーには、僕が用意した“めちゃくちゃ細かい”マニュアルを渡し、それを3人に教えてもらいます。ルールは簡単で、教わる側の3人は一切意見してはいけない。「ここはこうした方がいいのでは?」と感じても、ただ言われた通りにやるだけ。
10分ほどやってもらったあとに「こんな教え方をされたらどう思う?」と質問すると、ほとんどの人がこう答えます。
「やらされ感が強くて嫌だ」「楽しくない」「モチベーションが上がらない」
さらに「じゃあ、どうすればモチベーションが上がって、楽しく働けそう?」と問いかけると、
「自分に選択肢があって、ある程度は自分で考えながらできた方がやる気になる」
という意見が出てきます。
実は“マニュアル的に”教えている自分たち
ここで僕がこう伝えると、多くの人がハッとした顔をします。
「みんなマニュアルは嫌いですよね? “やらされている”感じが強いし、型にはめられている気がする。でも、実際に接客を教えるときはどうでしょう。
『いらっしゃいませ』から始まって、手順を順に教え、相手にその通りさせようとしていませんか? さらに普段の仕事でも、指示命令ばかりで、“相手に考えさせる”教え方をしていないのでは?」
この体験を通して振り返ると、多くのスタッフが気づきます。
「自分の教え方は、やっぱり指示命令ばかりだったかも…」
「考えさせる工夫をしていなかったな…」
“考える力”を育てるために必要なこと
ところが実際には、店長や社員スタッフ自身も「考える」ことに慣れていません。いや、正確には“考えているつもり”になっているだけで、本当の意味で考えていないことが多いのです。
「この仕事はなぜやっているのか?」と聞くと、返ってくるのは「他もやっているから」「前からそうだから」「なんとなく」という答えばかり。
これは、日常的に「なぜその仕事をするのか」「どうなればベストか」を考えていない証拠。つまり、多くの仕事が“なんとなく”で進んでいるのです。
だからこそ大切なのは、まず「仕事の目的」を再確認し、その仕事の“あるべき状態(ゴール)”を明確にすること。その上で「ゴールを達成するためにどうすればいいか?」を考える習慣を持たせることです。
指示命令から“考えさせる”マネジメントへ
「考えて行動できるスタッフ」を育てるためには、経営者自身がまず“指示命令型”マネジメントをできるだけ減らし、「ゴール達成のためにどうするか?」を考えさせる機会を意識的に与える必要があります。慣れてきたら、さらにゴールそのものを考えさせる。
そうやって段階的に「考える力」を鍛えていけば、スタッフが自走し、自然と組織全体が成長する流れをつくることができます。

