
ラストオーダー対応に表れる理念浸透
「ラストオーダーまで、あと15分しかありませんが、大丈夫ですか?」
閉店までまだ1時間弱もあるのに、こう言われると歓迎されていないように感じてしまいます。せっかく「もう少し飲もう」と思って立ち寄ったのに、一気に気持ちが冷め、「もう二度と来たくない」と思う人も少なくないでしょう。
このような対応は、単なるラストオーダーの案内ではなく「もう無理だから帰ってください」という心の内が表れてしまっているのです。そして、こうした小さな対応の中に、その店の理念浸透度がはっきりと現れます。
経営理念が浸透している店の違い
もしお店が「お客様第一」「顧客満足度を大切にする」といった経営理念を本当に浸透させていれば、この場面での対応は違ってきます。ラストオーダーよりも「ご来店いただいたことへの感謝」が優先され、普段と同じように笑顔で案内するでしょう。そして、それは店長だけができるのではなく、アルバイトスタッフも含めて「当たり前の行動」としてできるようになっているのです。
私はご支援先の勉強会で、こうした具体的な事例を題材に議論をする時間を設けています。例えば次のように問いかけます。
「ラストオーダーを5分過ぎてお客様が来店されました。キッチンはまだ料理を提供できる状態です。あなたはどう対応しますか?」
最初は、7割近くのスタッフが「帰ってもらう」と答えるのが普通です。しかし、その後に「では、会社の経営理念に基づいて考えるとどうなるでしょう?」と問いかけると、理念浸透の度合いによって答えが変わってきます。
理念浸透を進めるための取り組み
あるご支援先では、経営理念を新たに策定した直後に同じ質問をしました。そのときは9割近くが「帰ってもらう」と答えました。しかし、その後10か月間にわたり、次のような取り組みを継続しました。
- 毎日の理念唱和(暗記するまで繰り返す)
- 理念の言葉を深める月例勉強会
- 理念を自分の言葉で説明できるようにする訓練
この取り組みを重ねた後に再び質問をすると、ミーティング開始から3分も経たないうちに全員の意見がまとまりました。しかも、どのグループも同じ答えです。
「笑顔で、いつも通りにお客様をお席へご案内する」
これはまさに経営理念が現場に浸透した状態だと言えるでしょう。
理念が浸透していなければ、個人の判断はどうしてもバラつきます。しかし、理念を毎日唱和し、意味を掘り下げる時間を積み重ねることで、誰もが同じ価値観を持ち、自然に理念に基づいた行動を取れるようになるのです。
理念浸透がもたらす変化と重要性
理念は額に飾っておくだけでは意味がありません。スタッフが判断や行動の基準として使いこなしてこそ「理念が浸透している」と言えます。
もちろん、どんな状況でも必ずお客様を受け入れるというルールにはできません。しかし、理念が浸透すれば、アルバイトスタッフでさえも違和感なく「歓迎感を持って対応する」ことができるようになります。
特に、店舗数やスタッフが増えるほど、さまざまな価値観が持ち込まれます。だからこそ経営理念という共通の基準を全員で共有し、同じ判断を「当たり前」にできることが必要なのです。
マニュアル的な機械的対応ではなく、温かみのある接客を目指すお店ほど、理念を深め、共有する場を多く持つことが成果につながります。
まとめ|経営理念を現場で活かすために
ラストオーダーの一言のような小さな対応にも、理念浸透の有無ははっきりと表れます。マニュアルに頼るのではなく、経営理念を現場の判断基準として根づかせることこそ、接客力と顧客満足度を高めるカギです。
皆さんの会社では、理念浸透を進めるためにどんな取り組みをされていますか?
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