教育・指導の基本的考え方は、「守破離」

私が考える多店舗化においての主役は、もちろん「人」です。また、目指す人財像は、「一人一人が主体性を持って、自ら考えて行動できる」。ここに向かって教育・指導を行いますが、最初から、社員にすべてを任せて仕事をやらせてしまうと、必ず「失敗」します。

仕事は、武道や茶道の言葉にある「守破離」の原則で仕事をやらせていくのが、教育において最も大切なことだと考えています。なので、まずは、色々わからないことがあるけれど、強制的に仕事をやらせる部分もあります(これが「守」)。

そして、少しずつ各々の考えを仕事に反映させ(これが「破」)、その後、少しずつ各人に任せていく(これが「離」)。このような形で教育、指導を私自身が当初は行い、徐々に社内で指導、教育ができる仕組みつくりも行っていきます。

私が、人財育成でポイントにしていることを3点ほど記しておきます。

 

  1. 小手先の「手段」よりも、「再現性の高い」考え方を店長に学ばせよう!
  2. 262の法則に基づく階層別の指導方法と教育法
  3. 強制から習慣化。これを積み重ねて、自主性に変わる!

 

 

1)小手先の「手段」よりも、「再現性の高い」考え方を店長に学ばせよう!

店長の成長と成果を出すための方程式は、

「考え方」×「習慣化」×「行動力」

であると僕は考えています。 

成果を出しやすい「考え方」を身に着け、その「考え方」を「習慣化」し、そこで考えたアイディアを即「行動」に移すからこそ、成果がでます。

なので、僕のご支援先には、成果をだすための「考え方」を組織に導入し、それを「習慣化」させるためのコンサルティングを行っています。

 

とかく教育・研修というと、「手段」ばかり、たとえば、成果の出る販促策や成果のでるアルバイト指導例などを知ることだと考える人もいるようですが、「手段」を知るだけでは、同じ状況になったときのみしか、その事例を活用することができません

 

つまり、「再現性」が非常に低いのです。 

そのため、「たまたま」うまくいくことがあってもそれはあくまで「たまたま」であって、本当に「成果が出せる」店長にはなれないのです。

 

一方、「考え方」を身に着けることができれば、いろいろな場面で応用が可能で、自分で店舗運営や計数管理、販促立案、アルバイトの育成について考えることができます。いくら「自分で考えろ」と言っても「考え方」が分からなければ、何も行動を起こすことはできないですもんね。

これを踏まえ、当社の教育・研修では、特にどう考えるかという「考え方」の習得を目的とし、また、その考え方も「分かりやすく」「実戦で使いやすい」形でお伝えすることを一番の主眼に置いて行っております。

 

2)262の法則に基づく階層別の指導方法と教育法

人を指導・教育する際には、個々の能力や性格に合わせて行うことが重要で、能力や経験も少ない人に、出来る人と同じような指導をしても全く効果がありません。

だからこそ、各個人の能力を見極めて、その人に応じた教育がとても大切ですが、では、どのような見極めをすればよいのか。そこで、私が経営者の方にアドバイスするのは、「262の法則」にもとづいて指導方法を変えると分かりやすいですよと話しています。

組織は、大なり小なり多くの場合、下記のように、2-6-2という階層に分かれます。

2割の優秀社員、6割の普通社員、そして、サイドの2割のダメ社員。

どんな組織であっても、このように自然と別れるのですが、例えば、2割のダメ社員を「やめさせても」、6割の普通社員の中からまた、ダメ社員の2割が現れるという特徴があります。

よくダメな社員がいると、すぐにやめさせてしまう方もいらっしゃいますが、他の社員のことも考えて、その社員を辞めさせないでうまく活用することも組織マネージメントのコツだとも言われます。

さて、この262の階層をもう少し細かく分け、それぞれの仕事に対する取り組み方法を具体化すると次のようになります。

  1)指示がなくとも自分で考えて行動できる
  

  2)指示があれば、継続して行動できる
  

  3)できることはできるが、指示がないと行動しない、継続できない
  

  4)指示したこともできない、ルールさえも守らない

教育・指導を行い場合、この4つの階層別に教育・指導内容を分けて考えるととても考えやすくなります。

特に、組織内で最も問題児である、4)に属する人達への教育・指導方法で悩まれている経営者の方が多いと思いますが、この層に対してやるべきことは「しつけ」です。どんな教育をするよりも、まず、「やるべきことを確実にやる」という習慣を付けさせることが一番の教育です。

 「言われたことさえできない」

 「指示したことと違ったことをする」

という人に対して、色々な知識を付けさせたりしても意味はありません。

なぜなら、「指示したことさえできない」のですから。
だからこそ、まずは徹底した「しつけ」で良い習慣付けを行い、ワンランク上の階層に移してあげることが大切です。そして、3)の階層になったら、少しずつ様々な知識を教えたり、限定的にコーチングを活用したりする指導を行うことで、次の階層に移れるようにしてあげるといいでしょう。

 

コーチングを社員指導に活用しよう!

最近、飲食店でも人材教育を行う際に、コーチングを活用するお店が増えてきたようですが、ただ、勘違いしている人も多いようです。

それは「質問して考えさせることがコーチングである」と思っていること。

確かに問いかけをして相手に考えてもらうことは決して間違っていないのですが、もっと大切なことは、「相手に考えてもらって、そして、相手が自分で意思決定して行動に繋げる」ことです。

コーチングのメリットは、相手の力を引き出すために、相手に意思決定させることで、高いやる気を持って行動に繋げることができることです。つまり、単に「考えさせる」だけではダメで、相手に意思決定させて、行動してもらってこそ、コーチングがうまく機能している状態と言えます。

また、コーチングは相手の能力を引き出すために活用するので、相手の経験値が少なすぎたり知識が不足していると、相手の力を引き出すことはできません。その際は、ティーチングによって色々な情報を提供したり指導したりすることが必要となります。ですから、3,4の階層にはまだまだティーチングが必要だと言えるでしょう。

そして、3の階層からは限定的にコーチングを活用してみるといいでしょう。

1やの階層の人(それなりに経験や知識がある人)に対しては、

「最近客単価が下がってきたんだけど、その理由はなんだろうね?」

という問いかけからはじめてみて、要因分析から行動計画、そして、皆を巻き込むための動機付けの部分までを含めた計画を考え行動しやすい状態になるよう導いてあげます。

しかし、3の階層には「客単価が下がった要因」なんか分かるはずがありません。ですから、このような会話でコーチングを活用するといいでしょう。

「最近、うちの店の客単価、つまり、一人あたりの使う金額が下がってきてるんだ。多分、最近新人のアルバイトも増えてサービスレベルが下がってきたことが原因で、特に、店内のラウンドの頻度が減っていることが一番の原因だと思うんだ。で、ちょっと君の知恵を貸して欲しいんだけど、どうやれば今よりもラウンドの頻度を上げることができるかな?」

と「考える部分」を限定させて、そこから、行動に繋げられるようなコミュニケーションをとると、自分の意見が採用された気分となり、それがやる気のアップや行動力にも繋がります。また、ただ「行動内容」だけを考えさせるのではなく、経緯と目的等も話して「考えさせる」とより「考えやすく」なります。

1,2の階層には、どんどん課題を与え、積極的に仕事に取り組ませ、指導方法としてはコーチングを活用し、できるだけ相手に考えさせるような指導を心がけるといいでしょう。

 

3)強制から習慣化。これを積み重ねて、自主性に変わる!

先日、あるクライアント先でなかなか行動に移さない店長に対して、なかば強制的に店舗ミーティングを実施させました。

実は、「店舗ミーティングをやろう」ということになったのはこの1か月前。店長とのミーティングをした1週間後、状況確認をしようと電話すると、

「ミーティングの件ですが、みんな予定があるらしくて・・。延期しようと思います」

との返事。
このやりきれない態度に、怒り心頭の私は次のように告げました。

「単純に、君がやりたくないだけだろ?バイトがみんな予定あるって、それって本当なの?もし俺が店長だったら、2時間ぐらいのミーティングだと言って、実施日がいくら近く経ってみんなに無理言って、ほとんどのアルバイトを集めることできるぞ!

君の頭のどこかに『やりたくない』という気持ちがあるから、アルバイトへの声掛けも『できれば集まって欲しいなあ・・』という気持ちで声を掛けるから、アルバイトも『どうしてもじゃないみたいだし、面倒だから予定あることにしよう』って思うんだよ。単純に、やる気がないだけなんだよ!」

と電話口で告げると、店長はかなり頭にきた様子。  

「来週実施します」

と小さな声で私に告げました。
この電話の1週間後、毎月の店舗訪問の日がやってきました。「どうやった?ミーティング?」と尋ねると、店長はニコニコした顔で、

 「やってよかったです。」  

と答えました。すかさず、「何が良かった?」と尋ねると、

「ミーティングの後の営業は、これまでと全然違って。みんな声もこれまで以上に出してくれるし、そのせいかスタッフ同士の連携もとてもよくて、ここ数か月間で一番いい営業ができました」

と店長は答えました。

「ミーティング、これから定番化したらどう?」と告げると、

「そうしたいと思います」

と返事し、早速来月のミーティングのスケジュールを決定し、その内容の打ち合わせを店長と行いました。

 

アルバイトに厳しく接することができな人が増えた

最近は、店長やスタッフに「厳しく指導すると辞めてしまうかも・・」という思いから、「強制的に何かをやらせる」ということに抵抗感を感じている経営者さんや上司の方が多いようです。

  

また、強制的にやらせることで、会社の不満に繋がったり、あるいは、いつも強制的にやらせるだけでは、モチベーションが下がってしまうのではと考える人もいて、店長指導が億劫になっている方が多いようです。

しかし、強制的にやらせることで、「成功体験」をさせることができれば、次からは、必ず「自主的に行動する」ようになります。なぜなら、一度行った成功体験をもう一度味わいたいという思いと、一度やったことでその効果を自分自身で「体感」しているからですね。

事実、今回ご紹介したこの店長。

このミーティングの件以来、行動することで得られる成果を体感したことから、すべての仕事に積極的に、しかも、これまでと違って自主的に行動するようになりました。

  

強制的に何かをやらせることは決して悪いことではありません。

大切なのは、強制的にやらせたことが、必ず本人に成果をもたらしてあげることなのです。そのためにも、上司の側は、必ず成功させるアドバイスをし、そして、必ず成功させるようにやらせることがとても重要になります。

今回の店長に対しても、実は、ミーティング実施の2日前に、電話で打ち合わせをし、ミーティングを成功させる秘訣を1時間近くレクチャーしました。その指示通りにやったからこそ、ミーティングが効果あるものになったともいえます。

  

「自主的に行動させたい。そうしなければ、スタッフのモチベーションを下げてしまう」

  

確かにそうなのですが、「自主的に動ける」というのはある程度知識や経験がある人でなければ早々無理です。

   

また、経験や知識がないからこそ、こちらからの指示に対して抵抗感をどうしても感じてしまいます。これは仕方がないことです。なぜなら、誰しも自分が「体感」したことがないことに関しては、頭の中で「成功するイメージ」ができないため、どうしても行動すること自体に億劫になってしまうのです。

  

だからこそ、最初は強制的にやらせることが必要なのです。

ただし、先ほど述べたように、必ず成功させ、いい成果を「体感」させることが大切です。

自主性は自主的には生まれません。

まずは、スタッフの反発を恐れずに、「強制的にやらせる」ことに取り組んでみましょう!

それが、必ず、自主的に行動することに繋がります。

 

「型」が身に着くよう、強制的に仕事をさせることが重要

これらが、私の人財育成の基本的な考え方です。

基本的には、「人」を活かす経営目指してもらっています。そのため、社員自らが考えて行動できるようになること、これが目指す姿です。

しかしながら、この状態は段階を踏まえながら進めていくことが大切で、そのためにもきちんとしたプロセスを踏ませることがとても重要なのです。

だからこそ、「守破離」は非常に大切で、最初から「自己流」でやって成功するわけがありません。最初は、きちんとした「型」が身に着けられるように、強制的に仕事をさせることも非常に大切なのです。

その上で成長とともに、自主性、自己流できる範囲を増やしていく。こうしていくことこそが、確実なスタッフの成長をもたらすのです。

 

 

 

飲食店で年商10億、多店舗化を成功させる“12のメソッド”

1,会社の軸を明確にする

2,理念、ミッション、クレドをアルバイトにまで浸透させる

3,規律、決めごと、ルール、時間など、社会人として守るべきルールを組織内で徹底する

4,店長、副店長など、各役職の責任と役割を明確にする(評価基準を明確にする)

5,成功パターンを確立する

6,仕事のすすめ方を属人的にせず仕組み化する

7,社員エンゲージメント高める

8,社内のコミュニケーションを活発化させる仕組みを作る

9,学ぶ風土を社内に構築する

10,守破離の原則で人財育成を行う

11,接客は個性を引き出すマニュアル(サービスストーリー)を作る

12,教育カリキュラムを充実させる

終わりに

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