(6)現場への「なるべくやろう」は「やらない」という選択になる!
20年近く前、お店(居酒屋)でアンケートを実施しようということになりました。今はスマホを使用してアンケートをとるのが普通になってきましたが、当時は、「紙のアンケート用紙」を用意し、それに記入していただいていました。
アンケートは、回収枚数(回答数)が少ないと、良い評価か悪い評価かのどちらかに偏ってしまうため、できるだけたくさんの枚数を回収することが、アンケート調査を実施する際の重要ポイントになります。
だからこそ、どうやってお客様からアンケートを回収するかが課題になるのですが、多くのお店は、「アンケートにご協力いただいた方には、ドリンク1杯無料にします!」となんらかの特典をつけることで、回収枚数を増やそうとします。アンケートの目的からすると、これはこれで正しいですが、枚数が増えれば増えるほど、原価率は多少なりとも悪化してしまいます。
そこで、私は、現場のスタッフに「『すべてのお客様に声掛けをする』というのを徹底しよう」と指示を出しました。すべてと言っても、全お客様ではなく、「全組み」(各テーブルに1枚)必ず声をかけよう、という話したのです。
全テーブルに、お客様の食事がある程度落ち着いた状態になったときに、スタッフがアンケート用紙を持参し、「お客様失礼します!私たちは、皆様の声を聞いてお店の運営に活かしていきたいと考えております。大変お手数なのですが、このアンケートにご記入いただけますでしょうか?」という声掛けをすることを徹底したのです。
数日後、案の定、現場から、
「忙しいとできないときがあります。それでも全テーブルに声をかけないとダメですか?」
という声が上がってきました。
しかし、私は、
「どんなことがあっても、すべてのテーブルに100%声をかけましょう。また、どうやったらできるかも考えてやりましょう!」
と返事をしました。恐らく、この答えを聞いた現場スタッフは、不平不満をたらふく言っていたと思います。
しかし、この返事のおかげ?かどうかは分かりませんが、アンケート回収はこちらの想定したいた通り、いや、それ以上の回収ができアンケート調査でいい分析ができました。
さて、この事例のようなことが、皆さんの会社でもよく起こっていませんか?
現場に不満を貯めさせたくないため、「やってほしい」けれど「なるべくやれるようにしよう」という曖昧な回答で逃げてしまったために、本来やるべきことがどんどんやらなくなる、というようなことが起こっていませんか?
特に、現場が面倒になりがちな仕事ほど、こういうことが良く起きます。
・チェックリストを活用した仕事
・朝礼
・週間的なクレンリネス
・本部への業務報告
などなど。
現場に気を遣って、「なるべく、やれるときはやろう」と返事をしたことで、現場は「できるときは、やろう」と「なるべく」が「できるとき」と自分たちの都合のいいように変換され、いつの間にか「やらない」状態になっていくのです。
先ほどのアンケートの例で考えてみると、私自身、100%できるとは思っていません!最初から、70~80%ぐらいできたらいいなとしか思っていないのです。
それを「なるべくやろうね」と最初から70~80%の実施率を求めてしまうと、結果は、多くの場合、50%いや30%の実施率になることがほとんどなのです。
だからこそ、「絶対にやろう!」という指示が大切なのです。
もちろん、私自身も現場の経験がありますから、様々な指示をだすときに、どれぐらいの難度なのかを必ず考えます。もし、私自身がやるとして「これは難しいな」と思うようなことは、絶対に「現場にこれをやって!」とは指示をしません。
現場のモチベーションを考えないことはもってのほかですが、ただ、考えすぎて、「本来やるべきこと」をあいまいにすることは、結果、自分の首を占めることになるのです。
誰でもそうですが、新しいことが加わると人は必ず拒絶します。
しかし、それを習慣化させるようにしていくと、いつの間にか苦にならなくなります。ここまでを考えて行動させること、教育することが非常に大切です。
「絶対やれ!(やろう)」というのは、聞こえ方によればとても横暴的な発言かもしれませんが、これを大切にしないと、実は誰もやらなくなるのです。
組織としての成長を考えるのであれば、時には、嫌われ役も買ってでましょう!