(1)無意識、感覚でやっていたことを「言語化」「見える化」する
そもそも、「マニュアル」と「仕組み」の違いは何だと思いますか?
基本的に、「マニュアル」は作業の手順を記載されたもの。
「仕組み」は、事をうまく運ぶために工夫された計画、型、組み立て。
という風に私は定義しています。マニュアルは、どこの会社にも作ることが多いのでイメージできると思いますが、仕組みは、この定義づけでもなかなかイメージするのは難しいかもしれません。
お店が増えて、その中でも、仕事の質を落とさないようにするには、マニュアルだけ作っていても、お店の仕事を皆で共有することは難しく、そのためにも、「仕組み」を作っていくことが重要なのですが、これを「接客マニュアル」を例に仕組みをつくることの重要性をお伝えしたいと思います。
お客様の入店から、退店まで、どのようにお客様に対応した方がいいのかが記載されたものですね。つまり、接客の手順が記載されたものです。
これを使って(????)、出迎えの方法、注文伺いの方法などをアルバイト、パートさんに教育したりしていると思います。
ただ、接客マニュアルがあるからといって、実際の営業がスムーズに、また、お客様満足度を上げることができるとは限らないのです。
キッチンは、持ち場があるのである程度、担当と役割が決まっていますが、ホールは「誰がどこを担当するのか」、「それぞれどんな動きをするのか」が決まっておらず、皆が各々バラバラに動いていてとても効率が悪く、ただただ、皆が動いているだけで、お客様にご迷惑をおかけするといったことは、良く起こりますよね?
これが仕組みがない状態と言えます。
マニュアルはあっても、仕組みがないから、店に問題が起こってしまうのです。
これの何が悪いかと言えば、1人のスーパーマンがいると、この仕組みがない状態でも「問題ない状態」に見えてしまうのです。
どこの店にも1人か2人いると思うのですが、とにかく手作業が早く、動きも早い。そして、気づき力も半端なく、人の2~3倍も動ける、働けるスタッフ。
こんなスタッフいませんか?
こんな人が1人いるだけで、営業が円滑に回ってしまうのです。
もし、この人が店長なら、自ら動きながら、そして、すべてのお客様の状態を把握しながら各スタッフに指示をして店を円滑に回しているでしょう。
なので、一見すると、すごく優秀な店長に見えますよね?
しかし、この店長は「他の人でもできるような」仕組み、やり方をお店に残せないので、この店長が店を去るとその途端、皆がどう動いていいか分からず、料理の提供が遅れたり、お客様へも目が配れず、気が付いたら、売上が低下してしまうということが起こってしまうのです。
これが、店が増えるときにでてくる大きな課題なのです。
数店舗のときは、皆、「感覚」で仕事をしているので、いつの間にか、お店の営業を円滑にするための仕組みが、「無意識」、あるいは、「暗黙の了解」の中で営業をしています。そして、「できてしまっている」という現実があります。
しかし、新しい店をつくったときに、同じメンバーであれば、「無意識に」「暗黙の了解」の中で、それぞれが動きながらお客様をおもてなしできるのですが、新しい人が入ると「無意識に」「暗黙の了解」が全く通用しないのです。
そこで、先ほどのホールオペレーションを例にすると、サッカーのように、それぞれのポジションがあって、どこをどう担当するのか、そして、それぞれがどんな動きをするのか。また、各スタッフ同士がどうやって連携していくのか。
また、他がお客様対応しているとき、その時、他のスタッフはどうフォローするのか?
サッカーであれば、試合前などに、ホワイトボードに磁石があって、これを人にたとえて、各々がどんな動きをするのか。この場合は、こうやって誰かがフォローをする、みたいなミーティングをしているところを見たことがあると思います。
こんな感じで、ホールスタッフそれぞれに役割と責任を与え、それぞれがどんな動きをするのかの大まかな「型」を作っておけば、1人のスーパーマンがいなくてもある程度レベルの高いオペレーションを実現することができるのです。
そして、ホワイトボードなどを利用しながら、ホールオペレーションの動きを「見える化」することで、それぞれが感覚ではなく、視覚から動きを覚えることができるのです。
これが「仕組み」なのです。
また、ホールの各ポジションの役割と責任、どんな動きをすればいいのか、どうフォローすればいいかなどを「言語化」したものを作成すれば、これを見てホールの仕事を教えたりすることもできますし、また、アルバイト・パートさんも何をしなければならないか、また、それぞれのポジションをマスターするためのコツ・ポイントも一目で分かるようになっているので、仕事が上達しやすい状態を作ることもできます。
店が少ない時は、1人のスーパーマンが(多くの場合、社長が・・・)全部自分でやってしまうので、他の人に「やり方」を伝授しないままいなくなってしまうことが多々あります。
そのため、気が付けば、それぞれ何も「やり方」を知らないまま、見よう見まねで仕事をしてしまっている、ということがよくあります。見よう見まねでしか仕事ができないので、質が下がることは明らかですよね?
「できている人」からすると当たり前のことでも、他の人からすると難しいことがたくさんあります。それを「ある程度のスキルをもった人であれば、仕組みを使えばできる仕事ができる状態」を作っていくことがとても重要です。
マニュアルは、あくまで「作業の手順書」であり、仕事の進め方は分かっても、実際にどうやればいいのか、どう考えればいいのかは言語化されていないことは多々あります。それを補うのが「仕組み」であり、これをどれだけ構築できるかで、店の売上を維持、向上できるか、また、組織として機能するかどうかが決まると私は感じています。
仕組みをどう作るか?
多店舗化を進めるためには、仕組つくりを強化しましょう!