(4)自社で「自前の社員」を育成する仕組みをつくる
人と店が増える中で、早急に整備したい仕組みは、社員、アルバイトを問わずの「初期教育プログラム」です。
3店舗ぐらいでの人材募集は、経験者がどうしても中心になります。できれば即戦力で働ける人を望んでいますし、場合によっては、自社にないノウハウを持ち込んでくれればという思いもあるからです。
ただ、ある程度、人員が落ち着いた段階で、ぜひ、「自社で育てる仕組み」を
作られることをお勧めします。また、できれば「未経験」の人でも早期に育てられる仕組みを作ることを、そして、その仕組みの運用は、社員にゆだねるのではなく、経営者や幹部が直接関与しカリキュラムを作成していくことをおすすめします
さて、なぜ、早期に、自社で育成する仕組みを作るべきなのか?
人を増やす際に大切になってくるのは、「価値観」をいかに共有できるかです。経験者はそれまでの店、会社で育った価値観があり、これは働き方だけでなく、仕事に対する考え方も含めてなのです。
例えば、自社では、「クレンリネス」を徹底したいので、一作業が終わったら必ず作業台を拭いたり片づけたりすることを徹底したいと思っていても、経験者は、そういったことをクセ付けされなかった人は、絶対にそのクセが治らず清掃するという習慣を身に着けさせることが難しいからです。
「こんな小さいこと????」
と思うかもしれませんが、最初に身に着けた習慣というのは、なかなか変えることは難しく、また、年齢がいけばいくほど余計に変えることは難しくなります。
ですから、調理作業にしてもホール業務にしても「一」から学べる仕組みをつくり、自社の考え方や仕事のやり方を徹底して身に着けてもらうようなカリキュラムをつくるべきでしょう。そして、極端に言えば、高卒の新卒生が来ても1年から2年で社員としては普通に働けるぐらいの仕組みをつくれれば最高です。
あと、もつひとつ重視してほしいことがあります。
それは、この教育プログラムの運用を「人財育成専門」のスタッフを数名担当者として任命して、「その担当者がある程度は教える仕組み」にするべきでしょう。
多くのお店では、社員の「初期教育」もお店に任せている(任せっぱなし)ことが多いと思います。ただし、「教え方」をしっかり学んでいない人が「教える」と、多くの場合、「作業のやり方」だけを教えてしまうため、本来の「あるべき姿」で仕事を身に着けないため、すぐに、仕事の質が落ちてしまうからです。
3店舗ぐらいから5店舗前後でよくあるのが、
「昔はこの作業をきちんとやっていたのに、いつの間にかやらなくなった」
「気が付いたら、やり方が勝手に変わっていた」
「昔は、ここまでやっていたのに、いつ間にか、やらなくても普通という雰囲気になっていた」
なんてことが良く起こるのです。これは、「仕事の質」がどんどん低下していることであり、その結果、売上が思うように伸びない店が多発してくるのです。
つまり、店が増えるとともに、売上が下がる多くの原因は、この「質の劣化」なのです。
では、なぜ、「質の劣化、低下」が起きるのか?
それは、「教える人」が仕事をただ「作業」的に教えてしまっているからです。私はこういった状態を、
「それは教えているのではなく、ただ、作業のやり方を伝えているだけ」
と話しています。
だからこそ、いつの間にか大切な作業が省かれたり、重視して行わなくなったりするのです。
もし、最初に「教える人」が、
「この仕事は、こういう目的があって、非常に重要な仕事なんだ。これをしっかりやらないと、あとあとお客様に迷惑を掛けたりすることになるんだ。だから、確実に丁寧にやってほしい。そして、ここはこの状態までできて始めて『できた』になるから、ここまでしっかりやってくれよ」
みたいに、仕事のやる目的、そして、あるべき姿をしっかり伝えず、ただ、「作業(やり方)」だけを伝えているので、どうしても仕事の質が劣化してしまうのです。また、ただ、「伝える」だけなので、仕事を上手くできる方法、つまり、コツ・ポイントなどをしっかりと伝えていないので、「教わった側」が次の人に教える際にも、同じようにただ伝えるだけになるので、業務の質も劣化しますし、また、その業務を身に着けるまでにも非常に時間がかかってしまうのです。
こうやって考えると、最初に教える人って、非常に重要だと思いませんか?
だからこそ、最初の段階では「教える」ことをしっかり学んだ専任スタッフがしっかりと「教える」方が、あとあと、店の質が劣化しにくくなりますし、店のアルバイトの育成もしっかりとできるようになるのです。
最初に何から教えるのか?
そして、どうステップを踏ませて、研修を実施していくのか?
日々、何を教えるのか?
通常であれば、どれぐらいの期間で仕事をマスターしてもらうか?
また、ステップごとにその都度テストがあり、それをクリアしないと次にいけないようようにして確実にスキルアップさせる、
などなどのポイントを踏まえながら、教育プログラムを作成するといいと思います。これを専任スタッフときっちり教えるポイントなどを共有し、「教える」経験値を増やしてもらうと、ある程度の期間で「自社で育成できる仕組み」が完成するでしょう。
さて、今回の最後になりますが、お店で、アルバイトがアルバイトに教えたりしていませんか?実はこれってすごい怖いことですし、これがアルバイトの早期離職につながったり、売上低下を招く一番の原因かもしれませんよ。
ここまで今は関与しないと、いい店を維持することは難しいのです。