(3)Z世代に「お客様を見て」「お客様のこと考えて」と伝えても無意味
私は今年で55歳。この飲食コンサルタントの仕事を始めて30年近くが経ちました。コンサルタントを始めたころによくやっていた仕事は「お店の立ち上げ」。いわゆる、「開店コンサルティング」ですね。
とはいっても、コンセプトの立案とかその他諸々のことができるわけがなく、店が完成して、開店前のトレーニングでよくお店に派遣されていました。店ができたといっても中身はまだ何も完成していないので、テーブルセッティングから動線を考えた各種諸々のセッティングから、オペレーションの流れを作って、そして、アルバイト・パートを交えての接客研修とトレーニング。
この辺りを最初はたくさんやりました。
その頃の教え方というのは、一方的な「押しつけ」的で、マニュアルがあって、これを極端に言えば、一言一句間違わずやらせること。
これが接客指導の大半だったと思います。そして、その頃、よく言っていたのが、
「自分がされてうれいしいことをお客様にしてあげて!」
「お客さんをよく見て、何を望まれているか考えて!」
などなどの言葉。当時は当たり前に使っていたのですが、実は今は、この2つの言葉は、私のご支援先や研修等では、アルバイト・パートに話すことを「禁止」にしています。
「自分がされてうれいしいことをお客様にしてあげて!」
は、何がNGなのか?
それは、今は昔と違ってニーズが多様化して生きているので、一人が求めるものを他の人が求めるとは限らないからです。また、飲食店のサービスも多種多様になったため、余計に、「自分と他人」を一緒にすることが難しくなったと思います。
なので、今は
「私たちはこういったサービス、接客をお客様に対してしたいんです。
だからこの接客をやって欲しいです。
言い方は悪いですが、皆さんがやって欲しいかどうかは全く関係なく、私たちの店は、こうして欲しいので、この接客をしっかりやって欲しい」
と自分たちの考え方をしっかりと伝えることが重要になってきたということです。サービスには「正解」はないですから、「自分たちのお店の正解」をつくり、それをアルバイト・パートさんに伝え、浸透させることが重要なのです。
これが、今のアルバイト・パート教育には非常に重要になってきています。
さて、もう一つの、
「お客さんをよく見て、何を望まれているか考えて!」
これも今は、「アルバイト・パートさんに言わないで欲しい」と話していて、もし話しているとしたら、「それは、アルバイト・パートさんにとっては、拷問ですよ!」とまで伝えています。
なぜ、お客様をみて、お客様の要望を考えるのが難しいのか?
それは、今のZ世代である、アルバイトさんは特に、いわゆる「いい接客サービス」を受けた経験がほぼないからです。
今、彼ら彼女らが利用するお店というのは、恐らく、タッチパネルや自分のスマホを使って注文するようなお店がほとんどのはず。なので、お店側もすべて「受け身」であり、お客様が求めたことした対応しない店が非常に増えているからです。
こういったお店を基本的に利用している人が多いため、「接客のいい店」とか「いい店」というのは、自分の要望にきちんとスピーディに対応してくれるお店であり、スタッフからドリンクのお薦めがあったり、お薦めの商品を案内されることを基本的には望んでいないのです。反対に、「押しつけ」だと考える人が大半なのです。
そのため、いざ、自分が逆の立場になったときに、お客様にこちらからアクションを起こすことは、どうしても「心理的に嫌がる」アルバイトが非常に多いのです。また、そういう体験が少ないからこそ、お客様の何を見ていいかも全く分からないのです。これは、一つ目の「自分がされてうれいしいことをお客様にしてあげて!」というのが伝わらない理由にも繋がるのです。
だからこそ、「お客様をよ~く見て!」とか「お客様が何を求めているか考えて!」と言っても、彼ら彼女からすれば「何を言われているのか全く分からない」のが現状で、そういった指示をだしても、固まってしまったり、ぽか~んとしてしまうのです。
こういった事情を特に、私たち世代の人ほど知っておく必要があり、こういったことを踏まえて社員教育(アルバイトにどんな教育をするべきか?など)をすべきなのです。
では、具体的にどうアルバイトにホール教育を行っていけばいいか??
どんなステップを踏ませながらやっていくべきか??
次回から2回にわたってお伝えいたします。