(2)「店の仕事ができる人」ではなく、「仕事ができる人」を育成しよう!
アルバイト教育、社員教育と言えば、具体的に「何を教える」かと言えば、恐らく、「お店の仕事」をできるようにすることが教育だと認識している人がほとんどだと思います。
接客でいえば、お客様からの注文の取り方や料理提供の仕方
調理でいえば、料理の作り方や仕込みの仕方
これらを「できるようにする」ことが教育と考えている人が多いと思います。
ただ、私はこの仕事を30年近くやっていますが、単純に「店の仕事」できる人がすごく優秀かと言えばそうではないということを本当に思い知らされています。
皆さんの周りにもいませんか?「店の仕事はできる」けど、
・会社のルールは守らない
・上司の指示には従わない
・周りの人とうまくコミュニケーションをとらない
・自分勝手な行動ばかりする
・時間や期限を守らない
・自分流をたくさん作る
・自分の派閥をつくりたがる
・自分の好きなお客様には対応がいいが、他の人には愛想悪く、態度も悪い
こんな人いませんか?
そして、こういった人がいることで、かえって、お店の運営を円滑にできないようになっているようなことはありませんか?
先ほど、私は、「店の仕事できる」と書きました。
これは「仕事ができる」とは違うのです。
「店の仕事ができる」とは、接客でいえば、複数の仕事が重なっても、優先順位をつけながら、仕事を次々とこなせる。通常なら、3人ぐらいかかる仕事を1人でも十分対応できる。
キッチンでいえば、どんなにオーダーが入っても、慌てることなく、それほど提供時間が遅れることなく、すべての料理オーダーをこなせる。
こんな人が、「店の仕事できる」ということです。
そのため、お店の運営だけを考えるのであれば、こんな人がたくさんいる方が、助かりますよね?売上もある程度期待(店を円滑に運営できるので・・・)できますし、人件費的にも相当低く抑えることができるでしょう。
しかし、こういった人が”ひとり”いるだけで、組織は上手く機能しないのです。
店はチームでやっている以上、やはり、「規律」は必要です。
そして、周りの人と上手く関係性を築いたり、お客様ともいい関係性を作ることが求められます。
「店の仕事」だけできればいいという人は、上述したような「自分勝手な行動」を取るため、チームワークを乱し、また、お客様への対応が悪かったりするため、組織としての一体感をなくすのです。
また、こういった人は意外にアルバイトの”受け”がよく、こういう人にアルバイトはどうしても流されてしまい、「店の仕事できる人」の店だけ、どんどん規律が悪くなり、結局は、お客様に迷惑をかけるという店を本当にたくさん見てきました。(アルバイトは、ルールを守ること、チームワークが大切だということを理解していませんからね)
つまり、教育とは、ただ、「店の仕事」をできるようにすることが教育ではなく、それ以外のこと、特に「人間性」の部分を高めるように指導していくことも教育としてとても重要なのです。
そこで、最近の研修では、教育とは、「本学」と「末学」を教えることであると定義しています。
まず、「末学」とは、手法や手段を教えること。
つまり、お店の仕事、専門的な技術、スキル(接客や料理技術、コミュニケーション力)を高めることです。これが、ここまで記載してきた「店の仕事」を教えるということです。
そして、「本学」とは、その目的や背景を教えること。
単に、仕事を作業として教えるのではなく、その目的や背景まで教えること、とウキペディアでは書かれています。
ただ、これも大切なのですが、それ以外に、
・人間関係力を身につけること
・人格を磨き利他の精神を身に付けること
・損得勘定ではなく尊徳感情を大切にすること
といった意味もあるそうです。
私はこちらの方が非常に納得感があったのでこちらを重視して教育しようと皆さんにお話しています。しかしこれを「教える」となると、お店の店長には非常に難しいことになるので、これに相応するものがないかと考えると、会社には、経営理念やクレド、行動指針があると思います。
・経営理念は、世の中にどうやって会社が役にたつのか?
・クレドは、店の方針、店の考え方。
・行動指針は、人として大切にしたい会社としてのルール、指針
です。つまり、これらを徹底していくことが、人間関係を身に着けたり、人格を磨くことに繋がるはずなのです。
私のご支援先では、ここ10年ぐらい、どこの会社でも理念浸透や行動指針の浸透に力をいれるようにしました。すべての会社で上手くいっているわけではありませんが、理念の浸透度が進んでいる会社ほど、「店の仕事」だけができればいいという人は、自然といなくなり、いい意味で組織が機能するようになります。
ぜひ、「店の仕事」だけができる人つくりではなく、「仕事ができる」、人として人間力が高くなるような教育を実施していきましょう!