(6)「飲食店で働く上で最低限身に着けたい知識」を自社で構築し共有する

数年前、ある飲食企業で1年間、「マネージャー研修」を実施させていただきました。企業規模としては、50店舗ぐらいの会社で、その研修に参加したマネージャーは、10人ぐらいでした。
 
「マネージャー研修」ということで、かなり気合を入れて第1回目の研修を実施したのですが、正直、拍子抜けという感じだったのです。
 
というのは、参加された方は、30代後半以上で40代以上のマネージャーで、経験年数もかなり長い方ばかりだったのですが、「基礎的な知識」がなさ過ぎたからです。
 
 
例えば、原価管理。
 
・なぜ、原価率が上昇してしまうのか?、考えられる要因は?
・棚卸はなぜ実施するのか?
・1ヶ月のお店の原価率の算出方法は?
・コントロールすべきために日々やるべきことは?
 
といった質問に正確に答えられる人は、ほぼいなかったのです。
 
 
マネージャーは、「店長の指導をする」「店舗の売上、利益アップのためのサポート」が役割になりますが、”そもそもの”知識があまりにないことにちょっとびっくりしました。そのため、急遽、店長研修で実施する内容に変更しながら、もう一度、知識の整理をしていただくことになったのです。
 
もちろん、知識などを流ちょうに話せるようになってほしいとは思っていませんが、原価管理や人件費管理、そして、アルバイト指導などの「基本的な知識」が欠如していることにビックリした記憶が残っています。
 
 
そして、同時に、怖いなと思ったのは、「このマネージャーが自分の担当店舗の店長や社員の教育や指導を行っている」ということです。
 
 
きっと、マネージャー自身が最低限知っておいて欲しい知識があやふやということは、店長にも正しく教えられていない、もしくは、教えていないはずです。
 
すると、店長は、正しい知識を得ないまま業務を進めることになりますから、成果もでにくいでしょう。そして、店長以下の社員も正しい知識を身に着ける確率が非常に低くなるでしょう。
 
 
もし、会社が、仕組みとして上述したような、「飲食店で勤務するために最低限身に着けたい知識」を身に着ける機会、時間を確実に設け、教育していくのであれば別ですが、そういった機会や仕組みがないと、店には誰も正しい知識を持たないまま、見よう見まねで仕事をするということになってしまうのです。
これでお店の売上をあげたり、利益をだしていくのは非常に難しいですよね? 
こういったことがないように、外部の研修を活用されたりするのでしょうが、結局、会社主催ではないので、知識をしっかり身に着けるかどうかは本人次第になってしまいます。
また、会社としては、「そんなことぐらい自分で勉強してよ」と思うでしょうが、そんなことをする人は、私の今までの経験上、1%ぐらいしかいません!
 
つまり、社員に「自ら知識を得る」ことを求めることは、非常に難しいというかムリだということです。
 
 
ですから、私は、会社が、「仕事をする上で最低限身に着けてほしい考え方」を冊子等にまとめ、それを共通のテキストとして教育する仕組みを作ることをお勧めしています。
 
「市販の参考書的なものではダメ?」
 
という意見もありますが、原価管理や人件費管理は、これまでの経験上、会社ごとに考え方が微妙に違います。また、アルバイトの指導に関しても、どこの会社もそれぞれの考え方で行っています。
 
 
だからこそ、「自社の考え方の『軸』」としてテキスト的にまとめ、これを中途で入社してくる方にも、入社時に時間をとってしっかりと学んで理解してもらい、「うちではこういった考え方で仕事をして欲しい」ということを徹底してくべきだと思います。
 
また、テキスト内容は、定期的に理解度テストなどを実施しながら、さらに言えば、ミーティング時に、店長などが間違った考え方をしているようなら、「このテキストのここを見て、もう一度知識の整理をして」というように、この「自社の考え方の軸」をベースに仕事をすすめるという風土を社内に植え付けることが大切だと思います。そして、テキストには、理念の考え方のもっと掘り下げたものを記載したり、など、単に、仕事上に必要なスキル的なもの意外も、記載しておくといいと思います。
 
 
 
組織のメンバーが同じ考え方で仕事を進めることで、仕事のスピードも高まりますし、メンバー同士のミスコミュニケーションも大幅に減ると思います。
 
 
ぜひ、あなたの会社の「基軸」を作成してみてください。