(9)マニュアルの動画化は、あまりお勧めしない!
様々なツール、アプリが開発され、飲食店の仕事も非常に生産的になりました。売上管理や顧客管理、そして、発注やシフト組み、メニュー分析などなど、お店の現状を分析したり、店の業務を楽にするものがたくさん登場し、役に立っていると思います。
そして、飲食店が多店舗化するには、絶対的に必要になる「マニュアル」の類も、昔と違って、文字だけで伝えるものだけでなく、動画を使って、より分かりやすいものも登場しています。
これらのツールは基本的には、業務効率をアップさせるためにどんどん取り入れるべきだと考えていますが、ただ、マニュアルについては、動画はあまりおすすめしない、もしくは、作り方に注意が必要だと私は感じています。
第22日目の投稿「『いらっしゃいませ』の声量を数値化する」という内容の中で、マニュアルには、単に、作業手順だけではなく、作業のあるべき姿や目的、そして、作業を効率的に進めるためのコツ・ポイントも記入するとよいとことを言及しました。
もし、動画でのマニュアルを作成する場合は、ぜひ、この点を加味したものにしないと、動画で作業が分かりやすく理解できるようになっても、実際の現場では、「ただ作業的に」こなすようになって、結果、会社が望むようなものにならない可能性があります。
というのは、数年前、あるご支援先で、動画作成で少し問題が起きたのです。
ある時、全店に新メニューが投入され、皆が集まって新メニューの作り方を皆が集まって共有する時間がとれないということで、動画を撮ってそれをもとに、全店では商品作成をしていました。
ところが、思っているほど新メニューの注文数が伸びず、また、お客様からのクレームがあり、何かおかしいということで、数店舗にどうやって新メニューを作っているのか、動画を撮って送ってもらうことにしたのです。
すると、本来やるべき作業が雑になっていたり、やるべき作業が行わてなかったり、と全く意図したことができておらず、これが味のブレになっていたようでした。
この話を社長から聞いたので、実際、どんな動画を作ったのか、拝見させていただきました。
すると、その動画は、何もコメントが入らず、ただ、作業を撮影したもので、どこがポイントだとか、これはなぜやっているのか(目的)やどのようにするのが”あるべき姿”なのかが全く説明もされていなかったのです。
これでは、正しい商品をつくれるはずがなく、だからこそ、お客様からクレームが来たり、思ったほど注文数が増えなかったのです。
その後、この会社では、新メニューが導入されても、動画で共有することは辞め、皆が集まって共有することになりました。ただ、皆が集まっても、先述したように、ただ、作業を教えるだけではきっとまた同じことが起こるということで、勉強会で皆で、教え方や教わり方を再度共有することになりました。
私の個人的な意見としては、時代遅れだと言われるかもしれませんが、調理業務、接客業に関しては、デジタルツールで学ぶ(教える)よりも、やはり、「人が教えるべき」ではないかと考えています。
調理、接客とも、ただ、手順を伝えるだけでは、相手はその仕事をマスターすることが難しく、相手が何で苦戦しているのか、どうすればもっと上手くできるようになるのかを、相手をしっかり見てフィードバックしながら、教えることが「相手をできるようにさせる」ことに繋がると思います。
また、一度教えたことが、ずっと継続して同じやり方で、また、質を維持してもらうためにも、教える側があるべき姿や目的を何度も伝えたり、「ここが大事だから・・」と熱を入れて教えたりすることで、作業の重要性も伝えることができると思います。さらに言えば、教わる方も、質問したりもできますから、私は、「人対人」でやる方が、仕事をよりマスターしやすいのかなと思います。
なので、デジタルツールを導入するよりも、「教え方」を社内で共有する方が、仕事の質も高められますし、また、質も低下しづらいのではと思います。
もし、デジタルツールを使うのであれば、一度教えた後、振り返りや確認のための使用であれば問題ないだろうと思います。あるいは、作業的に行っても大丈夫なもの、例えば、クレンリネスなどは動画を活用してもいいのかなと思っています。(私が知らないだけで、もっと進んだものがあるかもしれませんが・・・)
意外に、「教える」ことを社内で共有したり、「教える」ことを「教わる」機会はほぼないに等しいと思います。
飲食業はアルバイト、パートを活用する部分が多いだけに、また、人がやる部分が多いだけでに、私は、この「教えることを教わる」という時間を社内に設けることが意外に重要ではないかと考えています。
何をどう伝え、相手のどこも見て、どんなアドバイスを送ればいいのか?
そして、相手とどうやってコミュニケーションをとっていけばいいのか?
結構、共有すべきこと、学ぶことはたくさんあると思います。
店が増え、人が増えた上で、店の仕事の質を低下させないためにも、「教えることを教わる」「教えることを学ぶ」時間を増やしてみてはいかがでしょうか?